ミュオン科学研究系活動報告2017(6月)

2017年 6月

◤ J-PARC MUSE施設整備状況

1. Uライン

 超低速ミュオンビームのコミッショニングを継続している。これまで超低速ミュオン生成標的に表面ミュオンを入射させる6台の超伝導ソレノイド電磁石の内2 台(3,4号機)は、間に設置されている陽電子セパレータの高電圧電源がこのソレノイドが生成する磁場のため不安定になる現象が起こったため使用していなかった。去年の11 月から、3,4号機を励磁した状態でのセパレータのコンディショニングを再開した。
 この結果、超伝導ソレノイドを使用することにより、超低速ミュオンのイールドが現状約30%上昇することを確認した。引き続き超伝導ソレノイドの電流値の最適化を行う。

 

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 図1:超伝導収束ソレノイド。青で示しているのがクライオスタット。3, 4 番目のクライオスタッ トの間にセパレータが設置されている。右からミュオンビームが入射する。 [拡大図(635KB)

 

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 図2:超伝導ソレノイドのON/OFF による超低速ミュオンの強度・時間構造の変化。 [拡大図(635KB)

 

2. 装置整備・開発等:標的

・MLF20系冷却水差圧計マイクロスイッチの不良調査

 2016年度の夏季メンテナンス作業において、ミュオン標的やスクレーパー、電磁石を冷却している20系冷却水の差圧計マイクロスイッチに接点不良が発生した。このマイクロスイッチの内部を調査したところ、この原因は硝酸アンモニウム結晶付着による接触抵抗増加の可能性が高いことが分かった。硝酸アンモニウム結晶の発生原因としては、スイッチの開閉時に起きる放電によって生成した硝酸と空気中に微量に含まれるアンモニアが接点金属のプラチナ上で結合し結晶成長している事によると推測されている。
 このマイクロスイッチのJ-PARCでの使用期間は10年程度であり、製品寿命であると考えるのが妥当である。夏作業時における冷却水系インターロック試験時において検査項目に追加し、適時交換で対応する。

 

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 図3:マイクロスイッチ接点の写真。接面に硝酸アンモニウム結晶の付着が見られる。 [拡大図(635KB)

 

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