ミュオン科学研究系活動報告2018(6-7月)

2018年 7月

◤ J-PARC MUSE施設整備状況

1. Uライン(超低速ミュオンビームライン)

【 超低速ミュオンの減速実験に成功 】

 2018年2月の超低速ミュオンを用いたミュオンスピン回転(μSR)実験の成功に引き続き、超低速ミュオンビームの減速実験を開始した。これは、30 keV の超低速ミュオンを高電圧ステージに印可した電圧で減速することにより、ミュオンの運動エネルギーを任意に設定して、サンプルへの打ち込み深さをコントロールするものである。減速実験では、サンプルとして、SiO2基板の上に 50 nmのAg層が蒸着されてものを用いた。エネルギーを下げながらμSR測定を繰り返し、15 keV付近で、ミュオンの停止位置が、SiO2からAg層に移っていくことが確認できた。今後は、さらなる低エネルギー領域での試験を進める予定である。


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  図1:減速用の高電圧ステージ [拡大図(721KB)

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    図2:減速実験結果。横軸:運動エネルギー。縦軸:μSR振幅 [拡大図(795KB)

 

2. 装置整備・開発等

【 陽子ビーム強度1 MW相当達成 】

 J-PARC物質生命科学実験施設において2014年9月にビームラインに 導入された回転標的は、現在の500kW連続運転に至るまでの4年間、大きなトラブルも無く運転を継続している。7月より長期保守期間が始まるが、同期間開始に先立つ7月3日午後に、目標強度である1 MW相当のビーム強度による連続運転試験運転が行なわれ、ミュオン生成回転標的も中性子水銀標的と同時運転での試験を行った。1時間と言う短い時間であり、完全な平衡状態には達しなかったが、回転標的を始めとし、2015年に導入したスクレーパや標的システムは問題なく稼働し、全ての計測値が想定の範囲内であることを確認した。2008年の施設の運転開始から目標としてきた大きなマイルストーンを達成致した。

 

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  図3:安定した温度上昇を観測(スクレーパNo1) [拡大図(389KB)

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    図4:安定運転終了後の集合写真 [拡大図(647KB)

 

 

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