ミュオン科学研究系活動報告2019(7月)

2019年 7月 11日

◤ J-PARC MUSE施設整備状況

 2018 年夏期長期シャットダウン期間中にミュオン生成回転標的の真空中回転シャフトと回転導入機をつなぐカップリングが破損していることを発見した。破損カップリングの交換後、ミュオン標的システムは2019 年夏期長期シャットダウンまで順調に稼働し続けた。今期のシャットダウン中に、2018 年中に交換できなかった回転シャフト下部の同型カップリングの交換を行う予定である。陽子ビームラインには運転によって生じたトリチウムが 蓄積されており,内部被ばく防護のためにアノラックスーツ・エアラインシステムを導入し て作業を行う予定である。
 2019 年7 月3 日に1MW 大強度試験が行われた。ミュオン標的によるMPS の発報は無くシステムは健全に動作した。大強度陽子ビームは10.5 時間にわたり安定に供給され、ミュオン標的ジャケットや回転軸、標的真空容器、スクレーパー等の1 MW 時における飽和温度の実測値が得られた。飽和温度は当初設計の評価値をほぼ再現しており、1 MW 運転でも問題ないことが示された。以上から、回転カップリングの改修が完了すれば、ミュオン標 的システムの1MW 受け入れ可能であるとの認識に達した。


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  破損したカップリング[拡大図(848KB)

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   アノラックスーツ・エアラインマスク器[拡大図(319KB)

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  大強度試験におけるミュオン標的温度推移[拡大図(877KB)

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   回転軸温度のビームパワー依存性。評価値と実測値はほぼ一致。[拡大図(700KB)

 

【 ミュオン:MUSE D ライン・1MW 試験 】

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1MW試験時、D1 Status画面に表示されたプロトン強度と分光器で計測したミュオンイベントレート。 [拡大図(831KB)

 2019 年7 月3 日に実施された1MW 運転試験においては、ビームラインのスリットを全開にして最大強度の表面ミュオンビームをD1 エリアのμSR 実験装置に導き、DAQ システムの耐性試験を行った。この際、μSR 実験装置にて1 GEv/h 超のイベントレートを達成した(図)。これは、1.4×106 μ+/s のミュオン強度に相当し、μSR 実験装置で観測された強度としては世界最高値である。一方で、DAQ システムでは数え落としが確認されており、対策が必要であることも明らかとなった。

 

 

 

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