2019年 9月 6日
【 MUSE Dラインセパレータ高電圧電源交換 】
Dラインでは、ビーム中の電子/陽電子を除去するために、静電セパレータ(いわゆるウィーンフィルタ)を導入している。昨夏、より高い電圧を印加できるように高圧電源の変更を行い、印加電圧を±170 kVから±250 kVまで増強することができた。しかし、2019年2月に交換した 高圧電源(Cockcroft電源)において不具合が生じ、再び印加電圧を±170 kVに制限して運用していた。この電源を、今夏新しいものに交換した結果、±200 kV超まで問題なく印加できることが確認された。現在さらにエージングを行い、印加電圧の昇圧を徐々に行っているところである。
【 ミュオン生成回転標的 】
使用中のミュオン標的一号機において、回転シャフト下部の回転カップリングが設計要求強度を満たしていないことが判明している。この交換作業を進めていたが、ミュオン標的を陽子ビームラインから抜き出して線量率を測定したところ作業空間において約1 mSv/hの高線量であったため交換作業を中止して、適正品が使用されているミュオン標的二号機を投入することとなった.現在,ミュオン標的挿入のための作業が進んでいる。線量率が高かった理由としては、中空の回転シャフトを経由した中性子ストリーミングによる高放射化が考えられる。
【 Sライン:試料環境の拡張整備 】
Sラインでは2019B期からの3He 冷凍機を使用した一般実験課題の受け入れにむけて準備が進行中である。冷凍機を運転して各温度での最適なパラメータを調整するハードウェア側の作業と並行して、3He冷凍機を自動計測用フレームワークIROHA2から制御できるようソフトウェア側の準備も進めている。たとえば3He 冷凍機では低温域、高温域と温度によって制御する温度計を切り替える必要があるが、これをシーケンス実行時に切り替える手段がこれまでなかった。また従来の自動測定プログラムでは特定のデバイスを試料温度として読み込むようにプログラムされていたため、これも同様にシーケンス実行時に切り替え可能にする必要があった。今回のソフトウェア改修により、特定のデバイスに依存せず温度パラメータの扱いを一般化でき、D1エリアの希釈冷凍機でも自動測定の完全サポートを実現できるようになる。
【 ミュオンH ライン屋外受変電ヤード工事 】
現在建設中のミュオンH ラインは高統計を要する基礎物理実験や透過型ミュオン顕微鏡などの実験が計画されている大強度ミュオンビームラインである。ビームラインに必要とされる電力は約5 MWに達し、MLF既存の受電設備では賄えないため、MLF第一実験ホール搬入口のそばに屋外受変電ヤードを建設中である(図4)。
受変電ヤード架台上への高圧受電設備の設置および50 GeV変電所からの高圧ケーブリングが完了し、現在ML 内部への低圧ケーブル引き込み作業のためのケーブルラック設置作業が進行中である(図5)