ミュオン科学研究系活動報告2020(7月)

2020年 7月 15日

◤ J-PARC MUSE施設整備状況

1. ミュオンDライン・ミュオニックX線元素分析装置高度化

 ミュオン生成回転標的が二号機に更新されてから初めての1 MW試験が6月25日から27日にかけて行われた。図1はミュオン標的系の温度をビームパワーの関数で表したものである。標的の回転軸の温度は最高で135度となり、1号機よりおおよそ10度程度高い。この理由は不明であるが、標的の個体差の範囲であると考えている。耐熱温度は300度であり、十分の裕度がある。標的冷却ジャケットや標的後方に位置するスクレーパー(散乱粒子を吸収させるためのコリメーター)の温度は1号機と同等であった。以上から,2号機においても1MW連続運転に問題ないことが確認された。
 赤外カメラによる1 MW運転中のミュオン生成標的の観測にも成功した。図2は観測されたカメラ画像である。観測された輝度画像から温度への変換については視野の校正作業が必要であることが分かっており、夏期作業中に校正を行う予定である。

 

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図1:ミュオン標的系温度の陽子ビームパワー依存性。 [拡大図(758KB)

 

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図2:赤外カメラで測定された1 MW運転中におけるミュオン標的からの輻射分布画像。 [拡大図(180KB)

 

2. J-PARC MLF Uライン 1 MW試験

 ミュオン標的で生成したミュオンを実験ホールまで輸送する超伝導湾曲ソレノイドは先頭部に直接ミュオン標的を見る部分がある。このため標的で生成する高速中性子などによる核破砕で発熱し、超伝導電磁石が昇温する。2019年の1 MW試験で励磁可能であり、ミュオンビームの輸送に問題ないことは確認した。しかし2019年の試験は10時間程度であり、温度上昇が飽和するまでには至っていない。
 今回の2日間の試験では温度上昇はほぼ飽和し、600 kWから1 MWへのビーム強度増強に対して、ΔTは最大で0.5 K、最高温度7.3 Kとなり、1 MWでの運転が可能であることを確認した。

 

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図3:赤外カメラで測定された1 MW運転中におけるミュオン標的からの輻射分布画像。 [拡大図(193KB)

 

 

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