2021年 2月 12日
ミュオンDライン・ミュオニックX線元素分析装置高度化
DラインD2エリアで展開されているミュオニックX線非破壊元素分析装置においては、測定効率を上げるために2台の多素子Ge検出器を導入した(図1)。
当該分析法においては、低速負ミュオンビームを被検試料に照射し、試料内のある深さにおいて停止した負ミュオンが原子核に束縛され、軌道間遷移を行う過程で放出される高エネルギーの特性X線(ミュオン特性X線)を計測する。このミュオン特性X線は高エネルギー(数10 keV~数1 MeV程度)であるため一般的にはGe検出器を用いる。しかし、Ge検出器の信号処理回路は1フォトンを処理するのに数10 μsec程度の時間を要するため、パルス当たり1フォトンしか処理できない。MLFでは25 Hzで負ミュオンビームが得られるため、検出器当たり最大毎秒25フォトンという計測レートとなり、計測効率は良くない。この検出効率を改善するためには、検出器の立体角を大きくすること、および検出器1素子当たりのサイズを小さくし、パイルアップを防ぐ必要がある。この目的に導入されたのが、今回の100素子Ge検出器となる。当該検出器1台での100素子全面積は2500 mm2であり、D2エリアに導入されている従来のGe検出器(CAMBERRA GL0110)の25倍となる。また、1素子の面積は25 mm2であり、同比1/4倍となる。導入の結果、システム全体の立体角は約5倍となり、これまでよりも効率的な測定が可能となった。現在、システム最適化を目指したコミッショニングが進行中である。