2021年 10月 15日
偏向電磁石DB2のコイル劣化対応および高度化
ミュオン標的から崩壊ミュオンビームライン(Dライン)に導かれたミュオンビームを40度曲げる偏向電磁石(DB2)はDラインで最も古い再利用の電磁石で製作から40年以上が経過しているため、劣化の顕著なコイルについて、線材(ホローコンダクター)の選定からコイル換装までを3年計画で実施した。
コイル製作にあたり、既存の電磁石の磁極並びにヨークおよび電源を用いるため、コイル外寸とコイルパラメータ(巻き数、電気抵抗等)は同等にする必要があった。また、将来、高運動量ミュオン(250MeV/c)の輸送にも対応できるように、冷却水路の増設も併せて行った。すなわち、今回の交換は、単にその劣化対応に留まらず、将来的に高運動量ビームに対応するための高度化でもある。
図1(左)はコイル換装作業の様子であり、DB2ヨークを上下分割して交換を行った。
交換後に磁場測定を行い(図1(右))、交換前後での磁場の整合性について確認した。図2はビーム軸方向に沿った磁場測定結果である。
Fringe-field付近の相違はアライメントのずれと思われるが、新旧コイルによる実測値および計算値は概して一致しており、交換後も性能に問題がないことが確認された。
今後、夏季メンテナンス終了後のビームタイムから再稼働する予定である。