2022年 2月 10日
ミュオン生成回標的
2019年に設置されたミュオン生成回転標的2号機は2年間安定的に利用運転を行ってきた。2021年夏期メンテナンス期間では、回転トルクを真空中回転シャフトに伝達する回転導入器の交換作業を行った。回転導入器は内部ベアリングの寿命により2年毎に一回の交換を行っており、標的2号機では初めてとなる本格的なメンテナンス作業である。
回転導入器を交換するためには陽子ビームラインの真空フランジを大気開放する必要がある。陽子ビームライン内には、ミュオン標的を構成する炭素原子核と3 GeV陽子との核反応により多種多様な放射能が発生し、ダクト内壁等に付着して蓄積されている。特にトリチウムは寿命も長く大気にさらされると水分子の水素原子と同位体置換しトリチウム水蒸気として作業エリアを汚染する。トリチウム吸引による内部被ばく低減のため、作業員に外部から呼吸用空気を供給するエアラインマスク及び皮膚呼吸を防護するためのアノラックスーツを着用して交換作業が行われた。作業区域はトリチウム汚染拡大防止のためグリーンハウスが設置され開口箇所の局所排気が行われた(図1※参照)。上記対策を行った結果、作業における内外被ばくは、計画量以下であった。
回転導入器を交換した際に、回転シャフト同士を接続する回転カップリングにおいてミスアライメントがあり、回転トルクが増大して設定された警報値(モーター定格トルク1 Nmの20%)を超える事象が生じた。交換作業によるミスアライメントは、その後に再交換作業によって解消されたが、2022年1月現在で回転トルクは最大 14%程度と警報値以下ではあるが増大しており、推移を注視しながら利用運転を継続している。