ミュオン科学研究系活動報告2022(9月)

2022年 9月 20日

◤ J-PARC MUSE施設整備状況

ミュオン生成回転標的

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図1:エアラインマスク・アノラックスーツを着用したミュオン標的回転導入器交換作業。 [拡大図(348KB)

 ミュオン生成回転標的の夏期メンテナンスの一環として、回転導入器及び回転カップリングの交換が行われた。昨年度に行われた同交換作業以降に回転トルクの異常増大が見られており、この調査も合わせて行われた.昨年度に交換された真空封止ガスケットの規格が正規のものより直径が 0.1 mm 短いことで生じた偏心によって回転導入器ベアリングに負荷がかかり、回転トルクに異常増大をもたらしていたことが判明した.真空封止ガスケットを正規品に交換するととともに、許容偏心が大きいオルダム型カップリング(従来 0.25mm→ 0.6mm)を採用し、交換作業が行われた。作業終了後に短時間の回転試験を行ったところ、回転トルクは正常であった。現在、長期回転試験を行い、ビーム利用運転への準備を進めている。
 上記作業については、高線量及びトリチウム雰囲気中での作業であるが、被ばく分散やエアラインシステムによる内部被ばく防止策(図 1 参照)を施し、これまでの夏期メンテナンスより個人最大被ばく線量を抑えることに成功した。


 

D1トリプレットの入れ替え作業

 物質・生命科学実験施設(MLF)における崩壊ミュオンビームライン(D ライン)の二つの実験エリア(D1, D2)の内D1実験エリアでは主に表面ミュオン(30MeV/c 相当)を用いた物性実験が行われている。当エリアでは実験条件によってミュオンの運動量を変えることができ、近年ではより高い運動量(> 90 MeV/c)のミュオンを用いた実験が要求されるようになった。しかし、D1実験エリア直前に設置されている現行の四重極三重項電磁石(DQ10~DQ12; 以下、D1トリプレットと称する)と電源(40 V375A)では 70 MeV/c のミュオンを輸送するのが限界である。以上のことから、現行のトリプレット及び電源のアップグレードを計画した。
 電磁石については、強磁場対応の既存トリプレットを再構築し、現行オプティクスを変更 することなくD1トリプレットとして使えるように電磁石ピッチ、エンドガード(field clamp)および共通架台の最適化を行い、将来的に 120 MeV/c のミュオンを輸送できるようにアッ プグレードされ、新D1トリプレットとしてビームラインに実装された。(図2)
 電源についても、現行の電源(40V375A)から強磁場対応の電源(75V1000A)に交換するため、電力ケーブルの盛替え作業、実負荷調整を今期のメンテナンス期間で実施する。
 新D1トリプレットは夏期メンテナンス終了後のビームタイムから運用を開始し、その際、ビームチューニングにおいてオプティクスとの整合性を確認する予定である。

 

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図2:上:旧 D1 トリプレット/下:新 D1 トリプレット。 [拡大図(778KB)

 

 

 

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