2023年 7月 11日
小惑星Ryuguの石の分析実験報告
概要:
小惑星 Ryugu 試料分析の国際公募(Hayabusa2-AO2)において取得した小惑星 Ryugu の 7 粒子(計 15 mg)についてミュオン元素分析を実施した。Ryugu の主成分である元素に由来するシグナルを明確に検出できた。
研究の詳細:
小惑星 Ryugu の表面は、宇宙風化の影響を受けていることがこれまでわかってきた。これにより酸素を始めとする元素の組成の変化が起こっていることが予想される。ミュオングループでは 2021 年に小惑星 Ryugu の初期分析の一環として、Ryugu 内部(Chamber C)から採取されたものを中心として元 素分析を行った(T. Nakamaura et al., Science 2022, K. Ninomiya et al., MaPS, submitted) 。今回、国際公募 Hayabusa2-AO2 において、宇宙風化の影響を調べるために Ryugu 表面で採取された試料(Chamber A 試料)の分析を提案し、認められた。
実験は 6/13~22 の日程で D2 エリアにおいて実施した(2019MS01 課題)。実験に先立ち、MLF 棟玄関に展示していた測定システムを D2 エリアに移設した。2021 年の実験と同様のセットアップで取得した Ryugu 試料に対してミュオン照射を行い、ミュオン特性 X 線の測定による元素分析を実施した(図1)。
図2に得られたスペクトルを示す。今回、15 mg というミュオン元素分析においてはこれまでにない少ない試料の使用であったが、試料に由来する元素のシグナルを検出できた。2021 年の実験と同じく、Ryugu の主要元素である C, O, Mg, Si, S, Fe が検出され、現在これらの強度から宇宙風化による元素組成の影響について定量的に議論を行っている。