ミュオン科学研究系活動報告2024(4月)

2024年 4月 22日

◤ J-PARC MUSE施設整備状況

ミュオンHラインの最近の進展

 J-PARC MLFのHライン(H2エリア)では、物質構造科学研究所と素粒子原子核研究所の連携によるミュオンg-2/EDM実験やミュオン顕微鏡に向けた準備が進められています。ミュオン標的から得られる4 MeV表面ミュオンはH2エリア内に配置されるミュオニウム生成標的に停止させ、数meVまで冷却されます。電荷が中性なミュオニウムは紫外コヒーレント光によりイオン化され、超低速ミュオンとなります。これにより得られる狭運動量幅の超低速ミュオンを200 MeV程度まで再加速して低エミッタンスビームを生成するため、g-2実験ではミュオンビーム由来の系統誤差要因を完全に払拭することができます。
 ミュオニウムの光イオン化には効率の点から真空紫外コヒーレント光が求められ、Uラインですでに構築されたものと同じ方式のレーザーシステムが導入される予定です。真空紫外コヒーレント光源には高い波長安定性が求められるため、レーザーシステム全体の温度安定性が重要です。このレーザーシステムは大強度の近赤外全固体レーザーを基礎として構成されるため、光路上の清浄度が光学素子の寿命に影響します。加えて効率の良い真空紫外光の発生には長尺(Uラインでは1mに対してHラインでは3m超)の波長変換用ガスセルが有効です。HラインではUラインで蓄積した様々な知見を活かしたレーザーシステムが設計され、長期安定に運用するために、幅2.4m長さ約10mの恒温クリーンルームが令和5年度中にH2ビームライン脇に整備されました(図1)。

 

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図1:H2エリア横に構築中のクリーンルーム(左)と完成したクリーンルーム内(右)

 

 現在、光学定盤やレーザーの冷却水循環装置などの設備に加えて、レーザー設置申請に向けた安全設備の準備が進められています。令和6年度にレーザーシステム本体の構築を行い、H2ラインにおいて超低速ミュオンの発生が行われます。

 

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