ミュオン科学研究系活動報告2026(7月)

2026年 7月 16日

◤ J-PARC MUSE施設整備状況

ミュオンS ラインの最近の進展

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 図1:ミュオンSラインの実験エリア。⼿前側のフェンスで囲われたエリアがS1実験エリア。奥側の⽩壁で囲われたエリアがS2実験エリアとS2レーザーハット。

 ⼤強度陽⼦加速器施設J-PARCの物質⽣命科学実験施設MLFにあるミュオン⽣成標的とD, U, S, Hという4つのミュオンビームラインは、物質構造科学研究所 ミュオン科学研究系を中⼼とするMLFミュオンセクションにより運⽤されている。本件ではこのうち2016年から運転が⾏われているSライン の最近の進展について報告する。
 約4 MeVの運動エネルギーと正電荷を持つミュオン(μ+)である表⾯ミュオンを輸送するSラインはS1とS2という2つの実験エリアを有し、μSR分光器を有するS1実験エリアはミュオンビームラインの中で最も多くの共同利⽤実験を実施している実験エリアである(図1)。2025年度には⽼朽化対策予算で静電キッカー電源の⼤規模改修が⾏われた。コンデンサの並列充電・直列放電で⾼電圧パルスを⽣成するMARX基板におけるSi-MOSFETの全数がSiC-MOSFETに⼊れ替えられることで2カ⽉あたり約15件あった基板異常エラーが発⽣しなくなり、S1とS2実験エリアでの同時シングルパルス実験が安定して実施されている。

 

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 図2:S3実験エリア建設予定の模式図。

 S1実験エリアでは装置課題やS型課題(⻑期実験課題)の実施⽇数が⽐較的少なく(例えば2026A期74.5⽇のうち13⽇)、短期間の実験課題が数多く実施されている(例えば2026A期は⼀般課題25件中20件が3⽇以下の実験期間)。2026A期にはMLFのビームが停⽌した影響で、16件の⼀般課題が延期となった。S1実験エリアで実施される実験のうち⽇数にして約半分は液体ヘリウムを⽤いる⼩型のクライオスタットであるMicrostatが試料環境として⽤いられ、420 Kから4 Kの温度範囲の実験が⾏われている。次に使⽤頻度が⾼いのが⽇数で約15%の実験で⽤いられるヘリウム3クライオスタットHelioxで、30 Kから0.3 Kの温度範囲の実験が⾏われている。2026年6⽉にはこのHelioxにおいてパルスチューブ冷凍機で不具合がみつかり、夏季加速器停⽌期間中での修理を予定している。
 S2実験エリアは岡⼭⼤学 植⽵智准教授グループの外部資⾦(科研費基盤S)による予算サポートで2021年に建設され、主に同グループのS型課題によりミュオニウムの1S−2Sレーザー分光法によるミュオン質量の精密測定が⾏われているが、2024年には⾼周波空洞によるミュオン加速実験も⾏われた。
 ミュオンSラインでは今年度、新増設の⼯事として第3の実験エリアであるS3実験エリアの建設が予定されている。蓄電池、燃料電池など電気化学デバイスを調べる事が⽬的の実験エリアであり、ミュオンセクションから幸⽥・梅垣・下村が研究分担する科研費基盤S「局所的イオンダイナミクスに基づく⾼イオン伝導体の創出」(代表:東京科学⼤ 平⼭雅章教授)と物構研CIQuSにより予算がサポートされている。S3実験エリアはS1とS2実験エリアの間から分岐してつくられ(図2)、運動量幅の⼩さいダブルパルスミュオンビームがとりだされる計画である。これまでにミュオンセクションで放射線評価や電磁⽯設計などが⾏われており、夏季作業では⼯事着⼿に向けた準備作業が実施される。

 

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