高エネルギー物理学研究所(KEK)が発足してから40年以上が経過しました。この間大学共同利用は日本独自の制度として発展し、現在に至っています。一方、1994年にはいわゆる「共用促進法」がSPring-8の放射光施設に適用され、2009年からは適用範囲が中性子施設(J-PARC)や高速電子計算機施設(京)にも広げられました。これにより物質・生命科学の分野では「大学共同利用」と「共用促進利用」と言う2つの異なる制度による運営と利用の並立という新たな状況が生まれています。
物構研は大学共同利用を推進するというミッションのもと、放射光科学研究施設を単独で運営する一方で、JAEAと共同でJ-PARCの物質・生命実験施設(MLF)を運営しています。そのためMLFの中性子利用では大学共同利用と共用促進利用が共存しており、利用者も時には混乱する場合があります。一方Photon Factoryは主に大学共同利用を行っているものの、有料での施設利用により産業利用をも積極的に行っていることから、共用促進施設と比較される立場にあります。そのような状況の中で、物構研と大学共同利用がどうあるべきなのか、「大学共同利用」と「共用促進利用」の2つの異なる制度の原点に立ち戻って考え直す機は熟している、と言えるのではないでしょうか。
以上のような問題意識から、今回のシンポジウムでは有識者の方をお招きして、大学共同利用の将来と物構研のあり方、とりわけ物質科学と生命科学の分野における大型施設のあり方について、大所高所に立った議論を行います。その中で10年後、20年後を見通した物構研のあるべき姿を明確にすることが重要だと思われます。このシンポジウムは可能な限り継続させて議論を深めたいと考えていますが、今回はそのためのスタートラインとしたいと考えておりますので、どうか活発なご議論をよろしく御願いいたします。
物質構造科学研究所長 山田和芳
趣意書 [PDF形式 : 121KB]