2021年12月の活動報告 : ストレンジネス核物理グループ
2021年12月20日
ストレンジネス核物理グループが2021年12月の活動報告を行いました。ストレンジネス核物理グループでは、KEK東海キャンパスにある大強度陽子加速器施設(J-PARC)のハドロン実験施設でストレンジクォークを含むハドロンや原子核を研究しています。今回は、Σ(シグマ)陽⼦散乱実験(J-PARC E40実験)の最新の成果を報告しています。
E40 実験は、正負電荷を持つシグマハイペロン(注)と陽子の間にはたらく力を調べ、原⼦核を構成する陽⼦・中性⼦にはたらく力である核⼒の理解を目指しています。次に述べる3点を実現することで多数の散乱・反応事象を測定し、⾼統計データの取得に初めて成功しました:(1)大強度π(パイ)中間子ビーム(本実験で使用したのはダウンクォークと反アップクォークからなる、負電荷を持つπ中間子)により大量のΣ粒子を生成、(2)液体水素(陽⼦)をΣ粒子の⽣成と散乱(反応)の標的とすることにより信号の精度を向上、(3)散乱(反応)後の粒⼦の位置・エネルギー等のみを測定。液体⽔素標的の周りには、CATCH(キャッチ)と呼ばれる円筒形ファイバー⾶跡検出器とBGO カロリメータから構成される検出器を設置しました。
今回の解析結果は、過去のデータに⽐べ圧倒的に統計及び精度が上がっていました。詳細はプレスリリース「J-PARCハドロン実験施設で奇妙な粒子と陽子の散乱現象を精密に測定 原子核を作る力の解明に大きな前進」もご覧下さい。データ解析は順調で、先日には新たな結果が発表されました。
注:ハイペロンとシグマハイペロン:素粒子であるクォークはアップクォーク(u)、ダウンクォーク(d)、ストレンジクォーク(s)など6種類あります。ハイペロンはsを含んだ粒子です。この内、負電荷を持つシグマハイペロン(Σ–)は2つのdと1つのsからなる粒子で、正電荷を持つシグマハイペロン(Σ+)は2つのuと1つのsからなる粒子です。
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