活動報告

2021年9月の活動報告 : 宇宙マイクロ波背景放射(CMB)グループ

KEK宇宙マイクロ波背景放射(CMB)グループ*)が2021年9月の活動報告を行いました。KEK CMBグループでは、誕生から約38万年後の宇宙で発せられたCMBの観測研究を行なっています。熱いビッグバン以前に宇宙が急激な加速膨張を起こしたとするインフレーション期では、重力波が生成された(原始重力波)と考えられています。CMBの偏光パターンの内、Bモードと呼ばれる渦模様が、この原始重力波によって作り出されると考えられています。そのため、CMBのBモード偏光を観測できれば原始重力波、すなわちインフレーションが起きた証拠を捉えるという科学史において最大級の発見となるのです。さらに、インフレーションの背後にある量子重力理論(超弦理論等)を検証することも可能となります。KEK CMBグループでは、地上観測実験POLARBEAR(ポーラーベア)とLiteBIRD(ライトバード)衛星計画により、CMBのBモード偏光観測達成を目指しています。

 

2020年代での打ち上げを目指すライトバード衛星計画においては、前回の報告(2020年12月)以降も様々な科学的・技術的な進展がありました。国際光工学会(SPIE)の主催する国際会議において、13件の発表を行い、プロシーディング(学術会議で発表する論文)を投稿しました。また、KEK 機械工学センターと共同で、低周波望遠鏡のミラーの1/4スケールモデルを作成しました。このモデルの物理システムは実機とほぼ同じなので、基本的な性能を本番同様の状態で検証できます。さらに、実機試験のための「KEKスペースチェンバー」の概念設計検討も進んでいます。KEKスペースチェンバーは、遠方(宇宙初期)から届くような波形にした電波を数ケルビンという極低温下で観測する試験を行うための、言うなれば「宇宙環境を地上に作る」装置です。

地上観測実験に関しては、COVID-19の影響でポーラーベア受信機のあるチリ・アタカマ高地の観測サイトでの活動を一時停止していましたが、米国グループがチリに入国出来るようになり、装置の再立ち上げを行い、現在は観測を再開しています。現在、ポーラーベア-2受信機を3台用いて観測を行うサイモンズアレイ計画が進んでいます。KEKで開発した1台目の受信機は既に観測中です。それに加え、KEKのポーラーベア-2受信機のデザインを土台にして改良を加え、米国側で製作した新しい受信機がチリに輸送され、現在現地で組み立て中です。

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