2019年11月の活動報告 : ILC 物理測定器グループ
2019年12月18日
ILC物理測定器グループが2019年11月の活動報告を行いました。
ILC計画は、全長約20kmの線型加速器で電子と陽電子を衝突エネルギー250 GeVまで加速し、正面衝突させ、物質に質量を与える粒子であるヒッグス粒子を大量に生成し、ヒッグス粒子と他の素粒子の間に働く力の強さ(ヒッグス結合定数)を1%レベルあるいはそれを切る精度で測定するヒッグスファクトリー(ヒッグス工場)実験です。ヒッグス結合の精密測定により、標準理論を超える物理を解明することを目指します。標準理論を超える物理の証拠が得られ、対応する新粒子の直接生成に必要なエネルギーが明らかになったら、衝突エネルギーの増強が必要になります。ILCのような線形加速器の一番の強みは、将来必要とあらば、円形加速器では到達できないような高エネルギーでの素粒子加速実験が可能な点です。
今年3月のICFA/LCBの委員会において、ILCに関する日本政府としての初めての公式見解が表明されました。その中で、日本政府は「日本学術会議の所見を踏まえ、現時点で日本誘致の表明には至らない」としつつ「ILC計画に関心を持って国際的な意見交換を継続する」としました。日本政府がILC計画への関心を公式に表明したのはこれが初めてです。
KEKは、日本政府による公式見解表明を受け以下の3点に取り組んできました:1. 日本学術会議が策定するマスタープランにおけるILC計画の議論、2. 今後数年の欧州での素粒子物理学の戦略を議論する「欧州素粒子物理戦略」の更新に向けた議論、3. 建設経費、運転経費の国際分担、計画実施のための組織の検討、建設に向けた技術準備の国際分担等に関する研究者からの提案である「ILCプロジェクト実施に関する提言」の策定。3については、日本政府に提出済みで、今後の政府レベルでの国際的な意見交換の際に活用されることが期待されます。
こうした進展の中で、10月26日から11月1日にかけて仙台にてLinear Collider Workshop 2019 (LCW2019)が開催され、ILC計画の重要性と国際コミュニティのILC実現に向けた決意を示す「仙台宣言」が採択・公表されました。
技術的な準備も順調に進んでおり、例えば素核研ILC物理測定器グループも含む日本のILC物理/測定器グループは、3つの主要装置(バーテックス検出器、主飛跡検出器、精細カロリメータ)の開発研究を進めています。また、研究所としてのKEKの環境を活かして、素核研ILC物理測定器グループは、実験室の環境検討や陽電子源開発、大規模な計算機システムを利用した大量のモンテカルロデータ生成などを、共同研究グループと一緒に進めています。
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