11月の活動報告 : 理論センター
2017年11月8日
KEK素核研の理論センターが、活動報告を行いました。いま話題のトピックとして、10月に発表された中性子星の衝突・合体からの重力波を観測した米国の観測施設「LIGO」と欧州の観測施設「Virgo」の両チームの成果と、世界中の望遠鏡や衛星による電磁波追観測で検出されたショートガンマ線バーストやキロノヴァについて、素粒子物理学とハドロン原子核物理学と密接に関わる宇宙物理学研究の第一人者である久徳浩太郎助教(卓越研究員)が詳しく解説しています。
久徳助教によると、観測された連星中性子星合体の重力波は、より精密な数値相対論に基づく波形で分析すれば、LIGOおよびVirgoにより得られている潮汐変形率への制限をさらに厳しくすることができ、中性子星の質量と合わせて、星を構成する高密度物質の構成を知る手がかりになるということです。
また、久徳助教を含む日本の数値相対論研究グループが、追観測された電磁波の理論解釈を行った結果、合体後の1-3日後に放出された青いスペクトル放射は「中性子が過剰でないため、重過ぎる元素は合成せず、温度が高いうちに青く光ったもの」、5-20日後に放射された赤いスペクトルは「ニュートリノをあまり浴びなかったために中性子過剰なまま放出された物質が、ランタノイドなど重元素を合成して赤く光った」と解釈できたと報告しています。さらに、今回はまだ未検出のニュートリノが同時に見つかれば、将来、ニュートリノの質量に上限を見つけられる可能性にも言及し、「宇宙物理と基礎物理の両方に見返りのある新しいマルチメッセンジャー天文学の対象かも知れない」と展望しています。
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