【T2K実験】反ニュートリノビームを使った実験を開始、ビームに同期した事象の観測に成功
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J-PARCハドロン実験施設の事故による約1年のシャットダウンを経て、T2K長基線ニュートリノ振動実験(以下T2K実験)は、に実験を再開し、夏前のビームタイムを予定通りに無事終了しました。
T2K実験はこれまでに「ニュートリノビーム」を用いたニュートリノ振動測定を行い、2013年には世界で初めて電子ニュートリノ出現事象を発見しました。今期からは、次の目標である「CP対称性の破れ」を測定するために、日本初の「反ニュートリノビーム」を使用してのニュートリノ振動測定を開始しました。
反ニュートリノは、ニュートリノの反粒子です。ニュートリノ(粒子)と反ニュートリノ(反粒子)のそれぞれでニュートリノ振動測定を行い、それらの間の違いを詳しく調べることで、粒子と反粒子の違いを表す「CP対称性の破れ」が、ニュートリノに対して存在するのかどうかを検証します。
レプトンに分類されるニュートリノに対してCP対称性が破れているかどうか、というのは、我々の世界が物質で溢れている(物質優勢宇宙と呼ぶ)事実に対する答えを与えてくれる一つの鍵として注目されています。
反ニュートリノビームを生成し運転することは、日本初(もちろんJ-PARC初)のことでしたが、には、岐阜県飛騨市にある後置検出器スーパーカミオカンデにて、反ニュートリノビーム運転を開始してから初めて、それに同期した事象を観測することに成功しました。
図1は、その時のスーパーカミオカンデのイベントディスプレイです。色の付いている小さな丸は、光センサにチェレンコフ光によるヒットがあった箇所を表しています。ヒットのあった光センサの位置や検出した時刻、光量などの情報を使って、チェレンコフ光の作る円形模様(チェレンコフリング)を探します。この事象では3つのチェレンコフリングが観測されたことが分かります。これらのリングがどのような反応なのか、また、このような事象がどれくらいの数あるかなどの詳細は実験グループが鋭意解析中です。
今夏はメンテナンスなどのため再度シャットダウンし、秋からはビーム強度を上げて測定を再開する予定です。パワーアップ後のT2K実験からの成果が期待されます。
用語解説
- T2K長基線ニュートリノ振動実験
- アメリカ・イギリス・イタリア・カナダ・スイス・スペイン・ドイツ・日本・フランス・ポーランド・ロシアの11ヶ国、59の研究機関の研究者が参加する国際共同実験です。日本からは大阪市立大学・岡山大学・京都大学・高エネルギー加速器研究機構・神戸大学・首都大学東京・東京大学・東京大学宇宙線研究所・東京大学Kavli IPMU・宮城教育大学の研究者と学生が実験の中心メンバーとして参加しています。