大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
素粒子原子核研究所
Institute of Particle and Nuclear Studies

第6回「戸塚洋二賞」を小林隆教授が受賞しました

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第6回戸塚洋二賞を受賞した小林隆教授(左)、中家剛教授(中央)、塩澤真人教授(右)。写真は先日のハイパーカミオカンデ国際研究グループ結成記念シンポジウムで講演中の様子【写真提供:KEK素粒子原子核研究所】

素粒子原子核研究所でT2K実験グループを率いる小林隆教授が、同実験グループの中家剛教授(京都大学)、塩澤真人教授(東京大学)とともに、公益財団法人 平成基礎科学財団が顕彰する「第6回戸塚洋二賞」を受賞しました。 授賞式は(土)に東京大学 小柴ホールで行われます。

今回の受賞対象は、T2K実験の成果である「加速器ミューニュートリノビームによる電子ニュートリノ出現現象の発見」における功績です。

T2K実験は、大強度陽子加速器J-PARC(茨城県東海村)を使ってミュー型ニュートリノを大量生成し、295km離れたスーパーカミオカンデ検出器(岐阜県飛騨市)で測定することによりニュートリノの特性のひとつである「ニュートリノ振動」を研究する実験です。 国内外の大学・研究機関と共同で推進する国際協力実験で、11カ国から約500名の研究者が参加しています。

2013年に、実験グループは加速器で作ったミュー型ニュートリノが電子型ニュートリノに変化するニュートリノ振動現象を世界で初めて測定しました。この発見は3種類のニュートリノの間でニュートリノ振動が起きていることを実証するもので、ニュートリノ振動現象の全容の解明に大きな進歩をもたらしました。現在は、ミュー型ニュートリノの反粒子である「反ミュー型ニュートリノ」を使って同様の実験を行い、ニュートリノのCP対称性の研究を世界に先駆けて進めています。

小林教授は大強度ニュートリノビームを生成する施設、中家教授は生成した直後のニュートリノビームを測定する前置ニュートリノ検出器、塩澤教授は295km飛行したあとのニュートリノを測定するスーパーカミオカンデ検出器の責任者として、世界中から集う研究者と技術者をまとめ、設計と製作を主導し、スケジュール通り2009年の実験開始を実現させました。 また実験開始後も、小林教授はT2K実験全体の実験代表者、中家教授は物理解析の総責任者、塩澤教授はT2K内スーパーカミオカンデグループのリーダーとして、T2K実験を強力に牽引してきました。

今回の受賞は、「ニュートリノ振動の全体像をほぼ明らかにしたこと」と、「ニュートリノにおけるCP非対称性の検証の道を拓いたこと」の先駆性が高く評価されたものです。

用語解説

ニュートリノ振動現象

ニュートリノは全部で3種類あります。 そして、はじめある種類だったものが、長距離を飛行する間に別の種類のニュートリノに変化することが知られています。 これは「ニュートリノ振動」現象と呼ばれています。

戸塚洋二賞

「戸塚洋二賞」は小柴昌俊博士が理事を務める平成基礎科学財団の事業の一つとして2009年度に創設されました。 基礎科学の実験または理論の優れた研究業績を挙げた研究者に対して顕彰され、ニュートリノ研究及び非加速器素粒子研究に対して授与されます。また、衝突型加速器による素粒子研究あるいはそのための加速器研究に対しては「折戸周治賞」が授与されます。

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