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高エネルギー加速器研究機構では、高エネルギー加速器を用いて、物質の究極的構造、素粒子の相互作用など自然の法則の探究、及び加速器によって作られる「放射光」「パルス中性子」そして「ミュオン」を用いて、物理、化学、生物、医学などの先端科学技術の研究を行っています。また、本研究機構は、総合研究大学院大学の教育の場として、これまで、加速器科学専攻、物質構造科学専攻及び素粒子原子核専攻を設けユニークな活動を行っており、総数87人の博士を送り出しました。この現場で加速器の実際に触れ、また素粒子原子核、物質構造科学の実験及び加速器科学の実験を自らの手で行うことによって、高エネルギー加速器が拓く新分野を体験し、理解し、楽しんでいただく3日間の実習を企画いたしました。
「放射光X線を用いたタンパク質の構造・機能解析と構造ゲノム科学」 「加速器の基本概念」 |
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「物質構造科学実習」 「加速器科学実習」 |
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申し込みに際しては |
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e-mail: oakutsu@mail.kek.jp |
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e-mail: nobuhiro.ishihara@kek.jp |
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e-mail: hiroshi.sawa@kek.jp |
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e-mail: junji.urakawa@kek.jp |
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[素粒子原子核実習テーマ]
理論物理学の最先端を目指す学生を対象として、原子核物理やハドロン物理から標準模型やそれを超える模型の試み、超弦理論までをわかりやすく解説する。 |
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我々は一昨年の夏以来B-ファクトリー実験を行ない、CP非保存現象の解明に取り組んでいる。この実験ではB-ファクトリーと呼ばれる加速器を用いて、大量の電子と陽電子を正面衝突させることにより、B中間子と呼ばれる重い素粒子とその反素粒子である反B中間子の対を大量に作る。次にこれらのB中間子と反B中間子が、ある特定の素粒子群に崩壊する反応を選びだし、崩壊までに経過した時間分布を測る。そしてその時間分布が、B中間子と反B中間子の間に違いがあるかどうかを調べる。このようにして、物理法則が粒子と反粒子に対して対称(CPが保存)であるか、非対称(CPが非保存)どうかを決定することができる。 この実習では、モンテカルロシミュレーション技法を用いて、このような事象を作成して、実際の実験データの解析に使われるプログラムを用いてデータ解析をおこない、いかにしてCP非保存実験が行なわれるか体験する。 |
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高エネルギー加速器研究機構では、ニュートリノの質量とその起源を解明するため、1999年4月より「ニュートリノ振動実験」を開始した。この実験では、250km先のスーパーカミオカンデで観測されるニュートリノの量と生成地点でのそれを比較する事により、ニュートリノ振動を検証する。生成地点でのニュートリノ反応を測定するのが、前置ニュートリノ検出器である。この夏期実習では、この前置検出器でのニュートリノ反応のデータ収集を実習し、端末の解析装置を使ってニュートリノ反応の再構成を体験する。また、スーパーカミオカンデのデータの一部を観測する。 |
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地表には宇宙からの使者素粒子ミュー粒子が、毎分1平方センチあたり1個やってくる。ミュー粒子は物質中で静止すると平均寿命2.2マイクロ秒で電子とニュートリノに崩壊する。本実験では、検出器として結晶シンチレータを使用して、ミュー粒子崩壊現象を検出し、その寿命の測定を試みる. |
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リニアコライダーでのこれら粒子の検出方法について、測定器性能、バックグランドなど実際の実験状況を再現し検討する。また、測定器の開発研究の状況を見学する。 |
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TeVエネルギー領域の素粒子物理を探索するアトラス実験では、LHCの陽子・陽子衝突反応から生じる荷電粒子の同定と運動量の測定のため、荷電粒子の飛跡を精密に測定する80μピッチのストリップ構造を持つ最新のシリコン半導体測定器、シリコンマイクロストリップ測定器を使用する。夏期実習では、最新の実機プロトタイプのシリコンマイクロストリップ測定器ユニットを使用し、荷電粒子の代替えとして1060nmの波長の赤外レーザー光を照射し、シリコンストリップ測定器からの信号を捕らえ解析することにより、シリコンマイクロストリップ測定器の動作原理、レスポンス、校正を学習する。 |
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宇宙線や原子核崩壊の際に放出されるアルファー線、ベータ線等の荷電粒子(電気量を帯びた粒子の総称)は空間のいたるところを無数に飛び交っている。実習では荷電粒子の飛跡検出の原理を理解した上で、非常に稀にしか起こらない原子核の二重ベータ崩壊を測定するために開発されたDCBA(Drift Chamber Beta-ray Analyzer)と呼ばれる検出器を使って、空間を飛び交う荷電粒子の飛跡を観測し、宇宙線とその他の粒子とを選別する。 |
[物質構造科学実習テーマ]
結晶組織中に見られるミクロン程度の微細な結晶を対象として、放射光白色X線を用いたラウエ法による微小領域回折実験を行い、得られるラウエ像の解析及び構造精密化を実習する。 |
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タンパク結晶構造解析はタンパク質分子の三次元構造を決定する最強の手法である。本実習ではタンパク質(リゾチーム)を結晶化、及び自動2次元検出器を用いた簡単な回折実験を行い、X線結晶構造解析に触れてみる。 |
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真空紫外線(VUV)〜軟X線域の円偏光放射光を用いる磁性体の内殻吸収磁気円二色性(MCXD)実験は、磁性体を構成する各元素を指定し、かつ特定の電子軌道を選択したスピン依存電子状態の情報を与える。極めて高感度のこの新手法は、ナノスケール磁性体のような超希薄な系のミクロの磁性研究を可能にする。角度分解モードで測定すれば、各原子のスピン磁気モーメント、軌道磁気モーメント、及び磁気双極子モーメントを分離決定できる。光子と電子の角運動量の交換による内殻MCXD実験の原理を理解する。ヘリカルアンジュレーター円偏光を利用し、擬2次元Co/Pt磁性人工格子とAu基板上Co超薄膜に対してこの実験手法を実習する。 |
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対象性の高い結晶が構造相転移して、対称性が低くなるとどのようなことが起こるのかを高分解能、高輝度の放射光を用いて単結晶と粉末試料で回折実験を行い観測する。 |
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放射光を用いると、重元素の内殻吸収端を狙うことによってX線を効率よく吸収させることが出来る。この方法をがんの放射線治療に応用する研究が進んでいる。実習ではその基礎実験として放射線によるDNAの切断が重金属の添加によってより効率良く誘発されることを確認する。 |
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μSR法の測定原理の概説をするとともに、実際に2台のスペクトロメーターを用いて磁性体の磁気秩序状態、ミュオンの量子拡散等を観測する実験を行う。 |
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中性子非弾性散乱実験により、ZrH2の水素の局所励起を測定する。この系では、水素原子は、量子力学初級で学ぶ調和ポテンシャル内の粒子として記述でき、エネルギー準位が観測できる。 |
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高分解能粉末回折装置Siriusを用いて、近年発見された超伝導体MgB2の結晶構造解析を行う。 |
[加速器科学実習テーマ]
線形加速で電子ビームを効率よく加速するためには電子ビームのバンチ長を3mm以下に圧縮する必要がある。一方、熱陰極電子銃により生成される電子ビームのバンチ長はおよそ30cmと長い。この熱陰極電子銃により生成される電子ビームを線形加速器入射部を使用して線形加速器での効率のよい入射をおこなうためのビーム調整など実際の加速器の運転を通して体験してもらう。 また加速器の重要な構成要素である加速空胴のモデル空胴の精密計測をおこないながらビーム加速やビーム圧縮を理解する。 |
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高速並列計算機の概要と、プログラムを作成する場合に必要となる技法について学ぶ。また、実際に高速並列計算機用のプログラムを作成し、物理現象の数値的なシミュレーションを行う。 |
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高エネルギー加速器や、ビームを使った実験ではいろんな局面で超伝導磁石が必須の道具建てとなる。超伝導電磁石には、線材設計、磁場設計、機械設計、冷却設計等が必要であるが、この実習では、超伝導体や鉄の性能や形状を理解した上で、導体の配置を考え、有限要素法の磁場計算を汎用ソフトANSYSを用いて実際にやってみることにする。 |
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放射性同位元素(Na-22)から放出される陽電子を高分子材料に入射させると、陽電子はポジトロニウムを形成する。この寿命は空隙の大きさに関係し、寿命を測定することによって、空隙の大きさを推定することが出来る。 |
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