Bファクトリー実験の最新結果を国際会議ICHEP2000(大阪)で発表

   Belle実験(写真)は昨年6月以降これまでに、約七百万のB中間子対の生成崩壊事象のデータを収集してきました。これらの中から、特別なモードに崩壊する98事象を見つけ出し、詳しい解析を行ったところ、粒子と反粒子で崩壊確率に違いがあることを示唆する結果が得られました。このことは、7月に大阪で行われた高エネルギー物理学の国際会議で報告されました。まだ収集した事象が少ないですが、今後、加速器の性能も向上することが期待されるので、近い将来、より確実な答えが得られるでしょう。

   粒子と反粒子の性質の違いを調べることが興味深いのは、素粒子の世界を理解することだけにとどまらず、初期宇宙には粒子と同数存在したとされる反粒子が、現在の宇宙では消滅しているという物理学上の大きな謎と関係があるからです。現在の粒子だけの宇宙の存在を説明するためには、粒子と反粒子に何か性質に違いがなければなりません。
     
   素粒子物理学では、このような現象をCP不変性に破れがあると表現します。一般の反応においてCP不変性は成り立っていますが、1964年に中性K中間子の崩壊で、僅かながら破れていることが発見されました。小林誠(KEK)、益川敏英(京大)の両氏によって、このCP不変性の破れが6種類のクォークの存在とクォーク混合によって起こる理論が提唱されました。中性B中間子において大きなCP不変性の破れがあることが理論上予測され、このことを実験的に測定することは、理論を検証する上で決定的に重要なことです。これを行うことが、まさにBelle実験の最大の目的なのです。

写真 Belle測定器
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