■ | 周長あたりのバンチ数は電子と陽電子は同じ数の1284個である。 |
■ | 電子と陽電子のバンチの大きさは、縦2.3ミクロン(髪の毛の約30分の1)、横110ミクロン(髪の毛の1.5本分)という小ささである。 |
■ | そして、電子のバンチの中には電子が5×10の10乗個(500億個)、陽電子のバンチの中には7×10の10乗個(700億個)の陽電子が詰め込まれている。 |
■ | バンチは光速で3000mのリングを走っているから、1つのバンチは10万分の1秒後に同じ位置に帰ってくる。このようにして、電子と陽電子の各バンチは毎秒10万回もぶつかり合っている。 |
■ | この小さなバンチを正確にぶつけるわけであるが、電子と陽電子のバンチは、0.5ミクロン以下の精度でぶつかるように制御している。 |
■ | さらに、バンチは平均5時間(電子)ないし2時間(陽電子)の間、安定してリングの中をぐるぐる回るように常に制御されている。 |
■ | たくさんの電子や陽電子がビーム状に走れば、電線がなくてもそれらは電流となる。KEKBのリングの中では、電子が1.1アンペア、陽電子が1.5アンペアの電流となって流れているのである。これは世界最大級の蓄積電流である。 |
■ | KEKB加速器は地下約10メートルに掘られた周長3キロメートルのトンネル内にあり、数千個の電磁石をはじめ多くのコンポーネントからなる巨大装置である半面、真空パイプ内を回る電子ビームと陽電子ビームの軌道が常時数ミクロン以内にコントロールされなければならない超精密機器でもある。たとえば大型台風が通過する際気圧の低下によって地表が極わずかに浮き上がり、それによって周長3キロメートルの軌道長は200ミクロン程度増える(1000万分の1以下)。このような小さな変動でも随時正確に測定して、その分だけ軌道が補正されるようになっている。まさに土木から超精密コンピューター制御まですべての工業と科学技術を駆使した装置といえる。今回の記録達成は我が国の加速器科学のレベルの高さを示すだけでなく、総合的な工業力の高さを反映しているともいえる。 |