【用語解説】 |
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1)CP対称性の破れ |
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粒子と反粒子の間に本質的なちがいがあるかどうかは、粒子と反粒子の入れかえ“C(チャージ)”と粒子の空間反転(鏡に写して見た状態)に対する性質“P(パリティー)”を組み合わせた“CP変換”に対する性質を調べることでわかる。粒子と反粒子のふるまいが同じならば「CP不変である」と言い、ちがいがあれば「CP不変性が破れている」と言う。たとえば、ニュートリノは左巻きのスピンをもち、反ニュートリノは右巻きのスピンをもつ。左巻きニュートリノに対して粒子・反粒子の入れかえを行うと、左巻きの反ニュートリノとなる。これに、空間反転を行うと正しく右巻きの反ニュートリノ状態が得られる。したがって、粒子と反粒子の間の本質的なちがいを調べるには、単なる粒子・反粒子の入れかえではなく“CP変換”を考える必要がある。 |
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2)小林・益川理論 |
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この理論において、CP対称性の破れはおよそ次のように説明される。
ウィークボゾンを交換する弱い相互作用において、Q=2/3e のクォークとQ=−1/3e のクォークは互いに移り変わる。この移り変わりは異なる世代間でも可能なので、3世代では9種類の組み合わせが存在する。1973年に小林誠高エネルギー加速器研究機構名誉教授(当時:京都大学理学部助手)と益川敏英京都産業大学理学部教授(当時:京都大学理学部助手)は、CP対称性の破れが起きるためには、2世代ではこの組み合わせの数が不十分であり、3世代で初めてCP対称性が破れることを示した。 |
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3)Belle実験グループ |
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世界13の国と地域の54研究機関から参加する約400人の研究者からなる国際研究チームである。 |
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4)タウとニュートリノ |
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電子はもっともよく知られた素粒子であるが、これには性質のよく似た「兄弟」が存在する。「長兄」はτ(タウ)と呼ばれ、質量は電子の3600倍、「次兄」はμ(ミュー)と呼ばれ、質量は電子の200倍である。この3種類の粒子はまとめて荷電レプトンと呼ばれ、それぞれに電荷をもたない相棒、ニュートリノが存在する。したがってニュートリノにも3種類ある。荷電レプトンとニュートリノをあわせてレプトンと呼ぶ。 |
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5)崩壊分岐比 |
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ほとんどの素粒子はきわめて短い時間のうちに別の粒子群に崩壊する。たとえばB中間子は1.6ピコ秒の寿命で崩壊するが、崩壊でできた粒子の組み合わせは知られているだけでも100通り以上のパターンがある。このときに特定のパターンにどのような確率で壊れるかを崩壊分岐比と呼ぶ。たとえばB0中間子がDとπに壊れる崩壊分岐比は0.3%程度であることが測定されている。 |
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6)標準理論と新しい物理法則 |
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電弱統一理論、量子色力学、小林・益川理論などを含んだ標準理論は現在知られている素粒子に関する実験事実をよく説明しているが、理論的には不完全な点が指摘されており、これを超えた新しい物理法則が存在して、現在の標準理論はこの理論の低エネルギーでの近似法則であると考えられている。新しい物理法則にはさまざまな仮説があるが、超対称性理論と呼ばれる理論がもっとも注目されている。これによると1000GeVくらいのエネルギーに現在知られている粒子の超対称パートナーが存在すると考えられ、これを探す、あるいは兆候を見つけることが現在の素粒子実験のもっとも重要な課題であると考えられている。 |
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7)超対称性理論 |
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自然界にある粒子は、粒子のスピン(自転)によってボゾンとフェルミオンの2種に大別される。ボゾンはスピンが0または整数で、フェルミオンは半整数である。元来、ボゾンとフェルミオンは全く別種の粒子と考えられていたが、ボゾンとフェルミオンの間に対称性があり、ボゾンとフェルミオンが同数種だけ存在し、それぞれ一対一に対応するということを超対称性と言う。 |
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8)荷電ヒッグス粒子 |
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真空から発生し、他の粒子の質量の起源となると考えられるヒッグス粒子は電気的に中性であるが、超対称性理論など標準理論を超えた素粒子理論では中性ヒッグス粒子と対を成す荷電ヒッグス粒子が存在することが予言されている。標準理論では荷電ヒッグス粒子は存在しないので、この存在が確かめられれば新しい物理法則の動かぬ証拠となる。 |