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last update:06/10/26  
  プレス・リリース 〜 06-15 〜 For immediate release:2006年10月26日
 
 
創薬に向けたタンパク質X線結晶構造解析ビームラインの設置
 
高エネルギー加速器研究機構 
アステラス製薬株式会社 
 
 
(概要)
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(以下、KEK)は、アステラス製薬株式会社(以下、アステラス製薬)の受託研究のためのタンパク質X線結晶構造解析用ビームライン*1を、放射光科学研究施設(以下、フォトンファクトリー)に新たに設置することを決定した。
 
本ビームラインは、KEKにあるフォトンファクトリーの65億電子ボルト(6.5 GeV)リングPF-ARのNE3セクション(図1)に設置し、アンジュレータと呼ばれる光源から発せられる大強度のX線ビームを用いる。この大強度光源に高精度回折計*2や高速X線二次元検出器*3を用いた回折実験装置、そして結晶交換ロボットに代表される自動化技術を組み合わせることで、多量の実験試料を高速に、かつ簡便に解析できるビームラインの設置を行う(図2)。現在、フォトンファクトリーの中で、タンパク質結晶解析用として同様に大強度のX線ビームを用いたビームラインは2箇所あるが、すでに大学や公的研究機関、民間企業の数多くの研究者に利用され、フルに活用されている。本ビームラインはそれらと同等以上の性能を有し、創薬をはじめとする高度なタンパク質結晶解析の共同利用及び施設利用に資することが期待される。
 
(背景及び今後の予定)
新薬の開発にあたっては、いかに効率よく標的とするタンパク質の機能を促進あるいは阻害する(効き目が高い)か、そしていかに標的以外のタンパク質の機能に影響をあたえない(副作用が少ない)か、という点が重要となる。そのために標的となるタンパク質や、そのタンパク質に化合物が結合した複合体の立体構造情報を解明することは薬剤開発に非常に有用である。このような立体構造情報を得るうえでX線結晶構造解析は極めて有効な手法であり、放射光は最適な光源である。大強度の放射光ビームラインでは、迅速にかつ精度の高いデータを収集することが可能であり、効率よく構造解析を行うことが出来る。その結果、ある一つの標的タンパク質に対して多種多様の化合物との複合体の構造解析を行うことが可能となり、より効果的な薬剤開発に繋がるものと期待できる。
 
これまでもアステラス製薬では、フォトンファクトリーの既存ビームラインを使用してきたが、自社の研究に合わせたビームラインを設置することにより、放射光を用いた創薬研究の効率を従来よりも劇的に向上させることが可能となる。新ビームラインの完成は2009年3月の予定で、同社は2009年4月から一定のビームタイムを継続して使用することになる。
 
なお、同社が使用しない期間は、全国の大学、公的研究機関および他の民間企業による共同利用・施設利用等に供することで、タンパク質X線結晶構造解析ビームラインの利用拡大を図ることが可能となり、放射光による物質構造科学研究の更なる発展を促すものと期待できる。
 

 
 
 【関連サイト】
  放射光科学研究施設(フォトンファクトリー)のwebページ
【本件問合わせ先】
  高エネルギー加速器研究機構
  物質構造科学研究所
  放射光科学研究施設
   施設長 若 槻 壮 市
     TEL:029-864-5631
    助 手 山 田 悠 介
     TEL:029-864-5200 内線4738
  アステラス製薬株式会社
   広報部
     TEL:03-3244-3201
【プレス発表・取材に関する窓口】
  高エネルギー加速器研究機構
   広報室長 森 田 洋 平
     TEL:029-879-6047
 

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図1 : KEKキャンパスの航空写真(左)とPF-ARの平面図(右)。新ビームラインは、PF-ARのNE3セクション(赤色で示した部分)に設置される。オレンジ色で示されたNW-12Aは、既存のタンパク質結晶解析用ビームラインの1つである。
 

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図2 :  ピンク色で囲まれた部分が今回設置を行う部分。光源より発せられたX線ビームは光学ハッチ(放射線防護室)内の光学系によって加工され、実験ハッチ内まで導かれる。実験ハッチ内には回折計やX線検出器の他、結晶交換ロボットが設置され、回折実験が行われる。実験者はコントロールキャビンと呼ばれる実験室で、実験試料の準備から実験装置の制御、データ解析までを行う。
 
 
 

【用語解説】
 
1)ビームライン
  放射光施設の蓄積リングから放射光を取り出すための実験設備。放射光施設には、行う実験の種類によって様々な構成のビームラインが存在する。
 
2)高精度回折計
  KEKで開発したタンパク質結晶解析用の装置で、数十ミクロンという小さな結晶の測定も可能にするために結晶を回転させる軸の芯ブレが1μm以下となっている。また、1msecまで試料へのX線の照射を制御できる高速シャッターも備える。
 
3)高速X線二次元検出器
  結晶からのX線回折像を記録する検出器のなかで、高性能のCCD等を用いて読み出し速度が高速(約1秒)な装置。回折データ収集では1データセットあたり約200枚もの回折像を記録するために、読み出し速度の高速化は測定時間の短縮化にとって大きな要因である。
 
 

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