J-PARC
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       プレス・リリース 〜 08-11 〜 For immediate release:2008年05月30日
   
 
J-PARCセンターと中国科学院高能物理研究所における
「核破砕中性子源開発」の研究協力覚書の締結
   
J-PARCセンター 
   
 
独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 岡崎俊雄 以下「原子力機構」)及び大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(機構長 鈴木厚人 以下「高エネ機構」)の共同運営組織であるJ-PARCセンター(センター長 永宮正治)と中国科学院高能物理研究所は、「核破砕中性子源開発の分野における研究協力覚書」を平成20年5月29日に締結しました。
 
● 概 要
原子力機構と高エネ機構は共同で、茨城県東海村にJ-PARC(大強度陽子加速器施設)の建設を進めています。J-PARCは光速近くまで加速した高エネルギー陽子により生み出される大強度量子ビーム※1を基礎研究や産業利用に供する施設です。
 
高エネルギー陽子が原子核に衝突すると、原子核がバラバラになり中性子などの二次粒子が多量に発生し、これを核破砕反応※2といいます。J-PARCの核破砕中性子源※3ではこの核破砕反応を起こし、生じる高エネルギーの中性子(温度換算で数百億℃)を-250℃程度まで冷やしてエネルギーを下げることにより、多様な中性子実験装置に適した中性子ビームを供給します。
 
核破砕中性子源の技術開発では、高エネルギー陽子ビーム入射にも耐えられる材料、中性子冷却用の極低温(-250℃)水素の取扱技術、放射化した機器を交換する遠隔操作技術などの開発が主な課題とされています。
 
このような中、中国では国家重大科学技術基礎施設※4の1つとして、中国科学院高能物理研究所※5において核破砕中性子源CSNS(China Spallation Neutron Source)の建設計画を進めており、平成20年より建設開始、平成25年に運転開始の予定です。
 
J-PARCセンターと中国科学院高能物理研究所は、両機関の技術情報の共有、人員交流、及び共同研究などにより将来の中性子源の性能と技術開発力を向上できると合意して、覚書を締結しました。
 
今後、本覚書に基づき核破砕中性子源を協同で研究開発することで、日中双方の人材育成並びに将来のJ-PARC利用の発展と成果の創出への貢献が期待されます。
 

 
 
  【関連サイト】 J-PARC webページ
日本原子力研究開発機構
  【本件に関する問い合わせ先】  
  J-PARCプロジェクトについて
 J-PARCセンター
  副センター長 大山 幸夫
    TEL:029-282-6809
報道担当
 日本原子力研究開発機構
  広報部次長 花井 祐
    TEL:03-3592-2346
  技術的内容について
 J-PARCセンター
  中性子源セクション
   前川 藤夫
    TEL:029-282-6217
 高エネルギー加速器研究機構
  広報室長 森田 洋平
    TEL:029-879-6047
 

 【用語解説】
 
※1 量子ビーム
  高エネルギー陽子を標的核に衝突させると、二次粒子として中性子、パイ中間子、K中間子、ミュオン、ニュートリノなどが発生する。J-PARCの実験施設では、これら「量子」と総称される粒子をビームとして利用する。
 
※2 核破砕反応
  約1億電子ボルト以上の高エネルギーに加速された陽子を水銀、鉛ビスマス、鉛、タングステン、タンタル、ウラン等の標的に入射することにより、標的の原子核がバラバラになり、陽子及び中性子などの多数の二次粒子を放出する反応を指す。
 
※3 核破砕中性子源(→補足資料
  加速器で生成した高エネルギーの陽子ビームが原子核に入射すると、原子核がバラバラになり、多量の中性子などが放出される(この核反応を核破砕反応と言う)。核破砕中性子源で生じる核破砕反応により生成した高エネルギー中性子(温度換算で数百億℃)を-250℃程度の実験に適した温度にまで冷やし、多様な中性子実験装置に中性子ビームとして供給する。実験装置では中性子ビームを利用した様々な実験が行なわれ、ライフサイエンス、工学、情報・電子、医療など、広範な分野の研究展開が期待されている。
 
※4 (中国)国家重大科学技術基礎施設
  2004年4月に(中国)国家発展改革委員会で選定された科学技術推進のための国家的施設であり、核破砕中性子源のほか、大型天体望遠鏡、海洋科学総合調査船、蛋白質科学研究施設、農業のバイオ安全研究施設など多数の施設等が建設される。
 
※5 中国科学院高能物理研究所
  北京に所在し、高エネルギーに係る物理を主な研究分野とし、所有するいくつかの加速器施設を利用しながら高エネルギー実験と理論、宇宙物理、原子核物理、加速器工学等の研究を進めている。
 

 【補足資料】
image
核破砕中性子源(J-PARCの例)
中性子源全体は、直径10m、高さ9mの鉄鋼製容器(アウターライナー)に収納されています。そのほぼ中心に水銀ターゲットが設置されており、これに1MWの陽子ビームを打ち込み、水銀の原子核を核破砕反応でバラバラにして毎秒1017個の中性子を発生させます。
 
水銀ターゲットの上下には、約20K(-253℃)の極低温水素を循環させたモデレータと呼ばれる機器が設置され、このモデレータによりターゲットで発生した高エネルギー中性子(温度換算で数百億℃)を-250℃程度まで冷やします。
 
こうして実験に最適化された中性子は、中性子源から放射状に23本のビームラインへ取り出され、各ビームラインに設置された様々な実験装置へ供給されます。中性子ビームは、中性子ビームシャッターの上下駆動により制御可能です。
 
また、中性子源のその他の空間は、余分な中性子が外部へ到達するのを防ぐための遮蔽体で埋め尽くされています。
 

 
「核破砕中性子源開発」の研究協力覚書の概要
 
  目的
本覚書は、J-PARCセンターと中国科学院高能研究所とで核破砕中性子源開発に関する技術情報の共有、人員交流、及び共同研究などを行ない、将来のJ-PARC中性子源の性能と技術開発力の向上に資するためのものである。
 
協力内容
 (1)協定の構造
  1.研究協力実施取決め
  2.人員派遣取決め
 (2)協力分野
  核破砕中性子源の開発(中性子源の開発、陽子加速器開発、
  中性子実験装置開発、その他当事者が相互に合意する領域)
 (3)協力形態
  1.科学技術情報の交換
  2.科学者、技術者及び専門家の交流
  3.共同研究
  4.その他両当事者が相互に合意する分野
 
協力期間
 覚書締結日から5年間
 (両機関の合意により延長することができる)
 
 
 
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