【用語解説】 |
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※1 |
超伝導状態 |
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金属を低温にすると、ある温度以下では電気抵抗が急激にゼロになる現象。1911年にオランダのK.オンネスによって水銀の電気抵抗が絶対温度4K(-269℃)でこの現象が発見された。 |
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※2 |
ミュオンスピン回転法 |
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ミュオン(ミュー粒子とも呼ばれる)とは、陽子の約9分の1、電子の約200倍の重さを持った不安定粒子である。正電荷を持つものと負電荷を持つものがあるが、ここでは正電荷を持つミュオン(μ+,正ミュオン)を研究に用いているが、正ミュオンは物質中で水素(陽子)とほぼ同じように振る舞うことから、加速器施設で大量に発生させたものをイオンビームとして物質に照射し、物質の内部磁場分布を調べる「原子サイズの方位磁針」として用いることができる。その原理はミュオンスピン回転法と呼ばれるもので、ミュオンの持つ磁気モーメントが磁場の強さに比例した周波数で回転することを利用しており、核磁気共鳴(医療用MRI等にも用いられている)に比較的近いが、ミュオン自身が放射性粒子である(短時間で崩壊して高エネルギーの陽電子を放出する)ため、極めて高感度であることが特徴である。 |
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※3 |
軽元素ネットワーク型金属 |
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二ホウ化マグネシウム(MgB2)では、ホウ素という軽い元素が形成する硬い格子(ハニカム格子)の上を電子が流れ、このハニカム格子と電子の相互作用が高い超伝導転移温度を導くと考えられている。このように、周期律表の右上(13〜15族)にある軽い元素群が創り出す結晶骨格に電気伝導性を付与したような金属を「軽元素ネットワーク型金属」と呼ぶ。これらの金属で超伝導状態が起きる場合、硬い格子と電子の相互作用によって高温超伝導が実現する可能性があると考えられている。本研究で取り上げた金属炭素化合物も炭素のネットワーク上を流れる電子が超伝導状態になる(YやLaといった金属は炭素に電子を供給するだけ)と考えられている。 |
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※4 |
銅酸化物超伝導体 |
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1986年に、当時チューリッヒのIBM研究所にいたJ. G. ベドノルツとK. A. ミュラーは、ある種の銅酸化物に不純物を混ぜ合わせて金属化すると、極めて高い転移温度を示す超伝導体になることを発見した。その後の爆発的な研究により液体窒素の沸点を大きく超える超伝導転移温度を示す銅酸化物も見いだされた。実用化のペースはそれほど早くはないが、最近では送電等の大規模な応用のための試験研究も徐々に進んでいる。一方で、その高い超伝導転移温度がどのような物理的機構によるのかについては、発見後20年以上を経た現在においてもいまだに研究者の間で見解が分かれている状態である。 |
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※5 |
第二種超伝導体/磁束格子状態 |
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超伝導体は外部からの磁場に対して2通りの応答をすることが知られている。1つは超伝導体の表面に超伝導電流が流れ、超伝導体内部に一切磁場が通らないような状態になる場合で、このような応答を示すものを第一種超伝導体と呼ぶ。これに対し、磁場によって超伝導が一部壊れて常伝導になり、その部分をある一定の強さをもつ磁場が通るような応答を示す物質を第二種超伝導体と呼ぶ。この場合、常伝導状態になる部分は空間的には細い針状のものが格子を組んだ様な形になる(図1参照)ので「磁束格子状態」と呼ばれる。 |