【用語解説】 |
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※1 |
水素吸蔵物質 |
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気体の水素を比較的大量に出し入れできる物質。古くから知られているものとしてはパラジウムなどを代表とする金属で、結晶の隙間を原子状態の水素が出入りする。
1kgのパラジウム(体積約83cm3)は約7gの水素を吸蔵するが、これは室温1気圧で約80リットルの体積に相当し、パラジウム中で体積が約1000分の1(〜1000気圧相当)までコンパクトになる。ただし、自動車の走行で一度に蓄えられるべき水素は重量で4kg程度(ガソリンの10分の1程度)と考えられており、パラジウムなら600kg近い量を必要とする。 |
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※2 |
水素結合 |
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窒素、酸素、硫黄、ハロゲンなどの周期表上右側の元素と結合した水素原子が、近傍に位置した他の原子に働かせる引力的相互作用。水素結合は、水(水素と酸素の結合)の性質、水と他の物質との親和性、あるいはタンパク質の高次構造などにおいて重要な役割を担っている。 |
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※3 |
水素化アルミニウム化合物 |
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水素化アルミニウムナトリウム(NaAlH4)に代表される化合物の通称で、アラネートイオン(AlH4 )とアルカリ金属のイオン結晶したもの。 |
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※4 |
軽元素水素化物 |
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ホウ素、アルミニウムといった軽い元素と水素との化学結合は酸素とのそれに比べて弱く、触媒等でさらに結合エネルギーを下げることで水素を出し入れできるようになると考えられている。このような物質をここでは軽元素水素化物と呼んでいる。 |
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※5 |
固溶 |
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固体結晶においても結晶を構成する原子どうしの間に十分な隙間があれば、液体と同じように原子/分子を含むことができる。これを固溶と呼ぶ。水素原子は原子の中でも最も小さいため、たとえばパラジウム結晶ではパラジウム原子3個に対して水素原子約1個の割合で水素を「溶かす」ことができる。 |
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※6 |
ミュオン |
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ミュー粒子とも呼ばれ、陽子の約9分の1、電子の約200倍の重さを持った不安定粒子。正電荷を持つものと負電荷を持つものがある。ここでは正電荷を持つミュオン(μ+)(正ミュオン)を研究に用いているが、正ミュオンは物質中でほぼ水素(陽子)と同じように振る舞うことから、加速器施設で大量に発生させたものをイオンビームとして物質に照射し、その内部を調べる「顕微鏡」として用いる。その原理(ミュオンスピン回転法)は、核磁気共鳴(医療用MRI等に用いられている)に比較的近いが、ミュオン自身が放射性粒子である(短時間で崩壊して高エネルギーの陽電子を放出する)ため、極めて高感度であることが特徴である。 |
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※7 |
格子間位置 |
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固体結晶を構成する原子どうしの間にはある程度の隙間があり、この位置を格子間位置と呼ぶ。 |
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※8 |
拡散運動 |
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原子は有限温度では熱エネルギーによる運動をしており、固体中の隙間にある原子も隙間から隙間へと自然に移動して行く。これを拡散運動と呼ぶ。 |
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※9 |
孤立μ+状態 |
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固体結晶中の隙間に入った正ミュオンが、周りの原子と化学結合をせずに存在している状態。 |
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※10 |
活性化エネルギー |
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水素/ミュオンが隙間(格子間位置)から隙間へと移動する場合、一般にはある一定以上のエネルギーを持たなければ乗り越えられない壁(エネルギー障壁)があり、それに相当するエネルギーを活性化エネルギーと呼ぶ。 |