J-PARC
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       プレス・リリース 〜 08-06 〜 For immediate release:2008年03月31日
   
 
ノーベル賞受賞実験の装置の一部をJ−PARC T2Kニュートリノ振動実験で再利用
   
J-PARCセンター 
   
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(機構長:鈴木厚人)と独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長:岡崎俊雄)の共同組織であるJ-PARCセンター(センター長:永宮正治)は平成20年度後半からの大強度陽子加速器施設(J-PARC)の利用開始に向けて、加速器のビーム試験等を進めています。

この度、J-PARCのニュートリノ実験施設※1において、「T2Kニュートリノ振動実験」(以下「T2K実験」という。)の前置検出器※2用電磁石が欧州合同原子核研究機構(CERN)※3より搬入されることとなりました。この電磁石はCERNの陽子-反陽子衝突型加速器でのUA1実験※4のために1979年に製作され、1983年にWボソン粒子とZボソン粒子※5の発見に貢献しました。この発見を導いた巨大プロジェクトへの貢献によりCarlo Rubbia(カルロ・ルビア)、Simon van der Meer(シモン・ファン・デル・メール)の両氏が1984年にノーベル物理学賞を受賞しています。この電磁石はその後1999年まで同研究所のニュートリノ実験(NOMAD実験※6)でも使われました。T2K実験は国際共同で進められている実験で、CERNからの電磁石だけではなく、前置検出器の建設のため、実験に参加している各国のグループは、前置検出器を構成するいくつかの測定器を自国で建設し、今後順次J-PARCに搬入する予定です。

3月28日には、CERNから運搬された第1便の電磁石用架台を常陸那珂港からJ-PARC内へ搬入しました。今後、電磁石ヨーク、電磁石コイルを順次搬入し、6月30日までに電磁石として組上げ、その後、前置検出器の縦坑内に据付けられる予定です。
 
 
  【関連サイト】 大強度陽子加速器を用いた次期ニュートリノ振動実験計画のwebページ
【本件に関する問い合わせ先】 報道担当
高エネルギー加速器研究機構
  素粒子原子核研究所
   准教授 塚 本 敏 文
    TEL:029-864-5431
    広報室長 森 田 洋 平
    TEL:029-879-6047
  独立行政法人日本原子力研究開発機構
  広報部次長 花井 祐
    TEL:03-3592-2346
 

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[用語解説]
 
※1 ニュートリノ実験施設
J-PARCで加速された陽子ビームを標的に照射しニュートリノを発生させ、世界最高強度のニュートリノビームを295km離れた東京大学宇宙線研究所スーパーカミオカンデ※7に打ち出す実験を行い、ニュートリノが飛行中に別の種類のニュートリノに変わる「ニュートリノ振動」という現象を調べる。1999年から2004年まで、K2K実験として高エネルギー加速器研究機構で実験が行われた。J-PARCニュートリノ実験はT2K実験としてK2K実験の約100倍のニュートリノビームを生成することができる。ニュートリノ振動現象を詳細に調べることにより、物質の起源の解明や、宇宙創成の謎に迫る研究である。T2K実験は、世界12ヶ国、61機関、約400名からなる国際共同実験で、2009年4月の実験開始を予定している。
 
※2 前置検出器
人工的に作り出される発生直後のニュートリノを観測する装置で、295km離れたスーパーカミオカンデで観測されるニュートリノとの強度やエネルギー分布の違いを調べる。
 
※3 欧州合同原子核研究機構(CERN)
ヨーロッパ諸国により設立された素粒子物理学のための国際研究機関で、設立は1954年。所在地はスイスジュネーブ郊外。周長27km、地下100m、フランスとの国境をまたぐ世界最大の加速器(LEP、LHC)で素粒子物理の研究が行われている。
 
※4 陽子−反陽子衝突型加速器、UA1実験
CERNでは、1981年から陽子−反陽子衝突型加速器(SppS)による実験を行い、UA1実験とUA2実験の2つの実験グループが、1983年にW、Zボソン粒子をほぼ同時に発見した。この時の陽子と反陽子の衝突のエネルギーは6千3百億電子ボルトであった。
 
 
※5 Wボソン粒子、Zボソン粒子
自然界に働く4つの力は、重力、電磁気力、強い力、弱い力であり、弱い力を媒介する力の粒子が、W、Zボソン粒子である。
 
 
※6 NOMAD実験
CERNの陽子加速器(SPS)を用いて行われたニュートリノ実験で、1994年から1999年にかけてデータを収集し、当時としては世界最高の感度でニュートリノ振動現象の探索を行った。
 
※7 スーパーカミオカンデ
岐阜県飛騨市の神岡鉱山跡の地下1,000mに建設されたニュートリノ検出装置で、円筒型タンク(直径39.3m高さ41.4m)内は、約50,000トンの純水で満たされ、水中でニュートリノによって散乱された荷電粒子が発するチェレンコフ光を光電子増倍管で検出する。
 
 
 
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