【用語解説】 |
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※1 |
ミュオン・スピン回転法(μSR) |
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加速器を用いて光の速度近くまで加速した陽子をターゲットの原子核に衝突させると、他の様々な粒子とともにパイ中間子を生ずる。パイ中間子はおよそ5000万分の1秒で崩壊し、ミュオン(ミュー粒子)※4に生まれかわる。ミュオンは、スピンという原子サイズの「棒磁石」のような性質を持ち、生まれた時にはその向きが常に同じ方向に揃っている。これらのミュオンを物質に照射すると、原子と原子の間で止まり、その場所での磁場の大きさに比例した周波数でミュオンのスピンが回転する。不安定粒子であるミュオンは平均寿命約50万分の1秒で崩壊するが、その瞬間に、スピンが向いている方向に陽電子を放出する。ミュオン・スピン回転法は、この陽電子の方向分布を時々刻々調べることでミュオンスピンの回転周波数を観測し、物質内部の微小な磁場を解明する実験手法。試料内部の超伝導電流の強さを、電流が作る磁場を通してミクロなスケールで測定できることが特徴。 |
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※2 |
反強磁性 |
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磁石の材料となる鉄等の物質は、「強磁性体」と呼ばれる。物質を構成する原子が持っている磁気モーメントが同じ方向に揃っているのが特徴で、この性質を「強磁性」という。これに対し、原子の磁気モーメントの向きが一つおきに逆転したような規則性を示す物質を「反強磁性体」、またそのような性質を「反強磁性」と呼ぶ。実際の物質では強磁性よりも反強磁性の方がより一般的に見られる。
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※3 |
LaFeAs(O1-xFx)系超伝導体 |
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物質の電気抵抗がゼロとなる超伝導は、通常は絶対温度0度(−273.15℃)に近い超低温でのみ起きる現象である。これは電気的に反発し合う電子が超低温で対をつくることに起因すると考えられており、その基本的なメカニズムを解明したJ. バーディーン、L. クーパー、R. シュリーファーによる理論は、彼らの名前の頭文字をとってBCS理論※5と呼ばれている。
1986年、室温では電気的に不良導体である銅酸化物が約−240℃という比較的高い温度で超伝導を示すことが発見され、その後の研究により−110℃程度といった高温で超伝導を示す銅酸化物も見つかった。BCS理論によれば、物質が超伝導を示す温度(転移温度 Tc )の上限は、−240〜230℃程度と予想されていたため、この発見は世界各地に驚嘆と集中的な研究をもたらした。その後、これらの高温超伝導の機構には、電子どうしがクーロン斥力相互作用で互いに反発しあいながら動く「電子相関」が重要な役割を果たしていることが明らかになってきたが、未だその完全な理解には至っていない。
銅酸化物の高温超伝導発見から20年余りを経た2008年2月、東京工業大学の細野秀雄教授らのグループにより、鉄化合物が−247℃で超伝導を示すことが発表された。鉄とヒ素の化合物にランタンの酸化物が加わったLaFeAsOに少量のフッ素を添加した、LaFeAs(O1-xFx)と記される物質である。従来型の超伝導の標準的な理論であるBCS理論では、鉄のように磁性を持つ原子は超伝導状態を破壊する方向に働くと考えられていたため、この発見は大きな驚きをもって受け入れられ、再び世界中に集中的な研究競争を引き起こした。現在はその渦中にある。
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※4 |
ミュオン(ミュー粒子) |
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電子と同じレプトン(軽粒子)の仲間に属する素粒子で、天然には宇宙線として地球に降りそそいでいる。正と負の電荷をもつミュオンが存在し、負の電荷をもつミュオンは多くの点で電子と同じ性質を持つが、質量は電子のおよそ200倍、陽子のおよそ9分の1であり、正の電荷をもつミュオンは物質中では水素の原子核の同位体のように振る舞う。陽子の約3倍という大きな磁気モーメントを持つため、物質中の内部磁場に対する感度が高い。 |
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※5 |
BCS理論 |
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超伝導現象は、1957年に米国の物理学者J. バーディーン、L. クーパー、R. シュリーファーによって提唱された理論によってその基本的な部分が解明され、その理論は3人の名前の頭文字を取ってBCS理論と呼ばれる。ただし、そこで考えられていた超伝導状態はある程度限定された状況を仮定したもので、例えば電子対を形成する際に働く引力相互作用の大きさ(結合エネルギー)は電子の運動の向きによらない(等方的)と想定されている。 |