【補足説明】 |
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※1 |
相対論的重イオン衝突型加速器(RHIC) |
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米国ブルックヘブン国立研究所(BNL)にある衝突型加速器で、2つの独立な超電導加速リングを持ち、陽子から金原子核までのさまざまな粒子ビームを加速し、衝突させることができる。全周は、約3,800mあり、2000年からさまざまな重イオンビーム同士の衝突実験を行っている。現時点で世界初・唯一の衝突型重イオン加速器で、世界初・唯一の偏極陽子衝突加速器。(ただし、2010年後半にCERNのLHCが重イオン衝突を開始すると、「世界唯一の衝突型重イオン加速器」ではなくなる。今のところRHIC以外に偏極陽子衝突加速器を作る計画はない。)
これまでに、金+金、銅+銅、重陽子+金、陽子+陽子の衝突を実現している。陽子ビームの場合は、そのスピンの向きをそろえた偏極陽子ビーム同士を衝突させることができる。偏極陽子ビーム衝突は理研とBNLの研究協力の結果実現した。ビームの最高エネルギーは、金ビームでは核子あたり100GeV、陽子ビームでは250GeVとなる。陽子の質量は0.94GeVなので、その質量の約107倍から約270倍のエネルギーにまで加速できる。核子あたり100GeVの原子核ビームは、光速の99.996%の速度に達する。(1GeV:ビームのエネルギーの単位。10億電子ボルト。単位電荷に10億ボルトの電圧をかけて加速した場合に相当するエネルギー。)
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※2 |
クォーク |
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物質を構成する最も基本的な構成要素。アップ(u)、ダウン(d)、ストレンジ(s)、チャーム(c)、ボトム(b)、トップ(t)の6種類がある。 |
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※3 |
グルーオン |
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物質を構成する最も基本的な構成要素。クォーク、反クォーク間の強い相互作用を媒介するゲージ粒子。クォークとグルーオンの相互作用を決めている法則を量子色力学(QCD)という。 |
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※4 |
PHENIX実験 |
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RHICを用いた高エネルギー重イオン実験の1つで、2010年2月現在で世界14カ国から71研究機関、500名あまりが参加する大型国際共同実験である。
実験代表者 | ストーニーブルック大学教授 Barbara Jacak |
副実験代表者 | 理化学研究所 副主任研究員 秋葉康之 |
副実験代表者 | コロラド大学 教授 Jamie Nagle |
実験本部長 | ブルックヘブン国立研究所 Edward O'Brien |
その内容は、RHICでの重イオン衝突で生み出される超高温・高密度物質QGPの研究や、偏極陽子衝突反応による陽子の内部構造の研究をしている。
日本からは、理研と米国ブルックヘブン国立研究所との共同研究の一環として、1995年から、理研、東京工業大学大学院理工学研究科、京都大学大学院理学研究科、立教大学大学院理学研究科の4機関が参加している。また、高エネルギー加速器研究機構を中心機関として実施している日米科学技術協力事業(高エネルギー物理学分野)でも、1994年から、筑波大学大学院数理物質科学研究科、東京大学大学院理学系研究科、広島大学大学院理学系研究科を中心に、高エネルギー加速器研究機構、筑波技術短期大学、早稲田大学理工総合研究センター、長崎総合科学大学情報学部の7機関が参加している。
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※5 |
格子ゲージ理論 |
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素粒子間の相互作用を計算するための手法。特に、陽子や中性子を構成する素粒子であるクォークおよびグルーオンの間の「強い相互作用」を計算するのに用いられる。空間を格子状に分割して、そこにクォークやグルーオンを配置し、その間の相互作用を計算機シミュレーションする。格子ゲージ理論の計算機シミュレーションには膨大な計算量が必要で、数千個のCPUを持つ超高速並列型専用計算機で数カ月にわたる計算を行う。 |
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※6 |
強い相互作用 |
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非常に短距離(10-15m程度)にしかその作用は及ばないが、自然界に存在する中で最も強い力。この力はエネルギーによってまったく異なった表れ方をするので、低エネルギー領域では核力(原子核を束縛させている力)と呼び、π中間子が力を伝える主役であるのに対し、高エネルギー領域では量子色力学(QCD)で記述され、力を伝える主役をグルーオンと呼ぶ。 |
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※7 |
量子色力学(QCD) |
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QCDは、クォークに働く強い力を「色」によって表現する理論。陽子や中性子では、3つのクォークがそれぞれ別の「色」(赤・緑・青)を持っており、グルーオンの媒介で「色」を交換することにより結合している。 |