2011年5月24日
国立大学法人 筑波大学
大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
日本の素粒子理論研究者らが構成する「格子場理論フォーラム」(代表:宇川 彰・筑波大学副学長・理事)は、アメリカの研究機関から計算資源(スーパーコンピュータ)の提供を受ける形での国際協力について、USQCD Collaboration(代表:Paul Mackenzie・フェルミ国立加速器研究所)と合意し、5月19日に利用を開始しました。国際協力が実現したのは、素粒子理論分野の中でも、計算機シミュレーションにより量子色力学※3 (QCD:Quantum Chromodynamics)の研究を行う「格子QCD」のコミュニティです。
2011年3月11日に起こった東日本大震災に伴う電力不足により、東日本にある研究機関のスーパーコンピュータの運用は大きく制限され、格子QCDの研究にも影響が出ています。そのような中、同分野の世界的な研究コミュニティの一員であり、従来は研究上の激しい競争相手でもあったUSQCD Collaborationから日本を支援する声があがりました。交渉を進めた結果、アメリカの3つの研究機関(FNAL・Jefferson Lab・BNL)が計算資源の一部を無償で提供する形で、国際協力が実現しました。
格子場理論フォーラムは、FNAL、Jefferson Labに設置されたスーパーコンピュータのおよそ1割、22TFlopsを上回る計算資源を約半年間にわたり使用します。これは、当該研究コミュニティが従来使用していた計算資源のおよそ1割に相当する量です。その他BNLからも、計算資源の一部が提供されます。なお、日本側研究者は、インターネットを通じて日本からこれら米国研究機関のスーパーコンピュータを使用することとなります。
今回の協力実現は、格子QCDコミュニティの国際的な結びつきの強さを示すもので、日米の研究者らは、これを機に国際共同研究など研究上の協力関係が深まることを期待しています。
イギリスの工学・物理科学研究会議(EPSRC)からは、科学技術振興機構(JST)を通じて、震災の影響を受けた研究者への計算資源提供の申し出がなされ、ヨーロッパからも支援の声があがっています。