プレス・リリース

震災によるフォトンファクトリー共同利用実験停止の緊急対応について

2011年5月13日
高エネルギー加速器研究機構

平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により、高エネルギー加速器研究機構(略称:KEK、機構長:鈴木厚人)においても研究施設が被害を受けました。KEKは、大学や研究機関などの研究者のための共同利用施設として設置された、世界最先端の研究を支える大学共同利用機関法人です。KEKで運用している施設の一つであるフォトンファクトリー(略称:PF)は、国内外から実験に訪れる年間約3千名を超える研究者の重要な研究拠点となっています。震災により、PFの運転は一時中断せざるを得ない状況となりましたが、PFの共同利用実験の停止は、多岐にわたる科学技術・学術の発展を停滞させるのみならず、次世代を担う若手育成にも影響しかねません。このような事態にあたり、PFはSPring-8をはじめとする国内外の放射光施設の協力を得て、PF運転停止期間中における共同利用実験者支援の措置を講じることにいたしました。
なお、PFでは、共同利用実験者に対する支援を行うとともに、秋の共同利用実験再開を目指し、復旧・整備を進めています。

1.受入機関と実験課題

PF実験停止に伴い、採択されていた実験課題について、他機関での実験実施に対する希望調査を行いました。その結果、他機関での実験希望があった課題について、申請者および各機関との調整の結果、平成23年5月13日現在で予定されている実験課題の受け入れ件数は以下のとおりです。

機関(施設)所在地実験課題(件)内訳(件)
理化学研究所、高輝度光科学研究センター(SPring-8)兵庫県104件物質科学:33件
生命科学:71件
大阪大学蛋白質研究所(SPring-8内BL44XU)兵庫県9件生命科学:9件
佐賀県立九州シンクロトロン光研究センター(SAGA-LS)佐賀県10件物質科学:10件
広島大学放射光科学研究センター(HiSOR)広島県4件物質科学:4件
日本原子力研究開発機構(SPring-8内BL22XU,BL23SU)兵庫県3件物質科学:3件
自然科学研究機構分子科学研究所
 (極端紫外光研究施設(UVSOR))
愛知県3件物質科学:3件
物質・材料研究機構(SPring-8内BL15XU)兵庫県1件物質科学:1件
兵庫県立大学高度産業科学技術研究所
 (ニュースバル放射光施設)
兵庫県1件物質科学:1件
135件物質科学:55件
生命科学:80件

また、以下の機関からも協力の申し出をいただいております。
 ・立命館大学総合理工学研究機構SRセンター(RITS-SR)
 ・Stanford Synchrotron Radiation Lightsource (SSRL)
 ・Taiwan Light Source (TLS)
 ・Shanghai Synchrotron Radiation Facility (SSRF)
 ・European Synchrotron Radiation Facility (ESRF)
 ・Diamond Light Source (DLS)
 ・Australian Synchrotron(AS)
 ・Advanced Light Source (ALS)
 ・Advanced Photon Source (APS)
 ・National Electron Accelerator Laboratory for Synchrotron Radiation Research(MAX-lab)

2.実験申請者に対するPFの支援

本件による他機関での実験については、PFで行う実験の振り替えという観点から、PFは大学共同利用機関の施設として技術支援などを行う予定です。

3.参考資料

<フォトンファクトリーについて>
光(Photon)の工場(Factory)の愛称で親しまれているPFは日本初のX線を利用出来る放射光専用光源として、1982年に完成しました。数度の大改修を経て輝度を高めるとともに、最新技術の実験装置の整備により、世界最先端の研究成果を創出しています。
このような大型施設は、大学などが単独で維持管理することが難しいため、大学や研究機関が共同で利用実験するための施設(大学共同利用機関)としてKEKで運用しています。年間約3千名を超える国内外の研究者が実験に訪れ、物質科学・生命科学の基礎から応用に至る研究を行っています。

[ お問い合わせ ]

高エネルギー加速器研究機構
広報室長 森田洋平
Tel:029-879-6047 Fax:029-879-6049
E-mail:press@kek.jp