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last update:06/04/13  
「見えないエネルギー」を伴った崩壊を発見
 
高エネルギー加速器研究機構  
 
Belle研究グループはB中間子が「見えないエネルギー」を伴った崩壊をすることを発見したと報告した。この結果はカナダのバンクーバーで開かれている「フレーバー物理とCP対称性の破れ」についての国際会議で発表されると同時にフィジカル・レビュー・レター誌に投稿されたものである。Belle実験はアメリカ、アジア、オーストラリア、ヨーロッパの13カ国、56の大学・研究機関からなる国際共同研究グループで、この実験は世界最高のルミノシティを誇る高エネルギー加速器研究機構(KEK)のBファクトリー(KEKB)で行われたものである。
 
B中間子がτレプトンとニュートリノに崩壊する現象はクォークからなる中間子がクォークを含まないレプトンと呼ばれる粒子のみに変化する過程である。この発見によって、B中間子を構成するbクォークと反uクォークがB中間子の中で出会って対消滅する量子力学的確率を直接測定することが可能となった。この確率を知ることはさまざまな素粒子現象の理解に必要であるが、これまでは直接測定できなかったので、理論的予測やスーパーコンピュータによる計算によって推測してきたものである。
 
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この崩壊現象の測定が特に困難である理由は、まず第一に崩壊確率が1万回に1回と非常に低いことがあげられるが、さらには、τレプトンは作られてすぐに荷電粒子とニュートリノに崩壊してしまい、ニュートリノは測定できない「幻の粒子」であるために、結局B中間子がτレプトンとニュートリノに崩壊しても、測定器で検出できるのは1個の荷電粒子だけである、ということが最大の理由である。一見この崩壊と同じように見える現象は実はたくさんあり、そのなかからこの崩壊現象をとらえることは、まさに「干草の山のなかから一本の針を見つけ出す」ことに等しい。Belle実験ではB中間子と反B中間子だけが同時に作られるように加速器のエネルギーが設定されており、ひとつのB中間子の崩壊を完全に再構築することによって、もう一方のB中間子の崩壊、特にニュートリノのような「見えないエネルギー」を実質的に測定することが可能となったものである。このような手法が可能となった背景にはKEKBという前例のない高ルミノシティ加速器によって約10億個のB中間子を作り出すことが可能となったことがある。
 
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このように「見えないエネルギー」を伴った崩壊の測定が可能となったことは、今後期待されるB中間子のK・ニュートリノ・反ニュートリノ崩壊やダークマターへの崩壊の測定に道を開くものとして注目されるが、このような測定によって新しい物理法則にチャレンジするためにはさらに100倍近いデータが必要であり、このためにBelleグループの研究者はKEKB加速器をさらに改善したスーパーKEKB加速器を提案している。
 
関連サイト: Belleのwebページ
http://belle.kek.jp
 

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