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last update:08/10/15  
尾崎名誉教授が米国物理学会ロバートR.ウィルソン賞を受賞
 
 
 
  尾崎 敏 名誉教授
  (画像提供)
   米国ブルックヘブン国立研究所
米国ブルックヘブン研究所の 尾崎敏氏(高エネルギー加速器研究機構名誉教授)が、日米両国での粒子加速器の物理への業績に対して、ロバート・R・ウイルソン賞を受賞されました。

米国エネルギー省(DOE)が運営するブルックヘブン国立研究所の物理学者、尾崎敏氏(高エネルギー加速器研究機構名誉教授)が、米国物理学会の2009年ロバート・R・ウイルソン賞の受賞者に選ばれました。この賞は、DOEのフェルミ国立加速器研究所の初代所長であったウィルソン氏を記念し、粒子加速器の物理に対する顕著な業績に対して贈られるもので、賞金は5,000ドルです。授賞式は、来年5月にカナダのバンクーバーで開かれる2009年粒子加速器国際会議で行われます。

尾崎氏は「日米両国で基礎科学の大型実験を実現させるための加速器の設計と建設に大きく貢献し、国際協力を推進した」ことが評価されてこの賞を受賞されます。

「私の業績をこのように評価していただいて光栄です」と尾崎氏は述べられました。「粒子加速器の設計と建設のために、何百人もの才能あふれる熟練した人々が何年もかけて努力します。私は、米国と日本で、大規模な研究施設を実現させるために私を助けてくれた方々に感謝します」

尾崎氏は、ブルックヘブン研究所のミハエル・ハリソン氏とともに、この研究所の世界的な加速器である相対論的重イオン衝突型加速器(RHIC)のための開発と建設を十年以上にわたり指揮しました。世界中から千人もの物理学者がRHICでの実験を行ない、重イオンとして知られる物質を構成する粒子を非常に高いエネルギーで正面衝突させ、ビッグバン直後の数十百万分の一秒に存在していた物質の状態を研究しています。2005年にRHICの物理学者は、宇宙開闢以来どこにも存在していなかった物質状態である「完全な」流体を発見しました。

2002年にRHICは、高エネルギーの偏極陽子のビーム(地球が地軸の回りを自転するように、陽子も回転の軸(スピン)を持ちますが、その軸の向きを揃えた陽子)を衝突させる、世界最初で唯一の加速器ともなりました。RHICの物理学者は、陽子のスピンがどのように生じるのかの謎を解こうとしています。

RHICプロジェクトより前に尾崎氏は、高エネルギー物理学研究所(現・高エネルギー加速器研究機構)に1981年に招聘され、日本で最初の大型高エネルギー衝突型加速器であるトリスタンの建設を指揮しました。尾崎氏はトリスタンをスケジュールの通りに、また建設予算の通りに完成させました。この加速器は電子と陽電子のビームを300億電子ボルトまで加速します。加速器が動き始めた1987年当時は世界最高のエネルギーでした。トリスタンでは、粒子が衝突し、ごく小さく点状の領域に非常に高いエネルギーが集中している状態が作られます。このような高エネルギー衝突によって、非常に短い距離での物質の電磁相互作用の特質を明らかにし新しい重い粒子の発見を目指したものでした。

尾崎氏は、マサチューセッツ工科大学で1959年に物理学の学位(Ph.D)を取得された後にブルックヘブン研究所に研究員として着任し、1972年には終身在職権を持つ主任研究員となりました。1981年にKEKの教授となり、500億円規模のプロジェクトであるトリスタンの仕事をされた後、RHICプロジェクトを指揮するために1989年にブルックヘブン研究所に戻られました。660億円規模のRHIC加速器を完成させることに加えて、RHICが偏極陽子を加速できるよう、日本の理化学研究所から資金の援助を得る事にも尽力しました。

2005年から現在まで、尾崎氏はブルックヘブン研究所のNSLS-IIプロジェクトのための加速器システム研究部門を率いています。この新しいシンクロトロン放射光源からの非常に高い輝度のX線は、様々な科学分野の基礎・応用研究に利用されます。また、米国内及び国際的な研究機関、研究施設、政府機関の様々な諮問委員会、評価委員会に携わっています。更にアメリカ物理学会の特別会員であり、同学会の物理国際フォーラムの議長を務めています。2007年にはブルックヘブン研究所のミハエル・ハリソン氏と共同で、RHICの設計と建設の成功に果たした指導力に対して、米国電気電子学会(IEEE)の粒子加速器科学技術賞を受賞されています。
 
 
関連サイト: 2009 APS Prize and Award Recipients(「Robert Wilson Prize」)(英語)
http://www.aps.org/programs/honors/prizes/prizerecipient.cfm?name=Satoshi%20Ozaki&year=2009
ブルックヘブン研究所(英語)
http://www.bnl.gov/world/
ブルックヘブン研究所のニュースのページ(英語)
http://www.bnl.gov/bnlweb/pubaf/pr/PR_display.asp?prID=846
 
 
略  歴: 1955(昭和30)4月 大阪大学大学員理学研究科 博士課程入学(1957(昭和32)9.30 同 休学)
  1955(昭和30)9月 マサチューセッツ工科大学大学院 博士課程入学(1959(昭和34)6月 同 卒業)
  1956(昭和31)7月 マサチューセッツ工科大学 リサーチ・アシスタント(研究助手)
  1959(昭和34)6月 米国ブルックヘブン国立研究所 リサーチ・アソシエイト(助手)
  1961(昭和36)7月 同 アシスタント・フィジシスト(助手)
  1963(昭和38)7月 同 アソシエイト・フィジシスト(助教授)
  1966(昭和41)7月 同 フィジシスト(教授)
  1968(昭和43)7月 同 スペクトロメーターグループ・リーダー(研究主任)
  1972(昭和47)7月 同 シィニアー・フィジシスト(専任教授)
  1981(昭和56)1月 高エネルギー物理学研究所 物理研究系研究主幹(教授)
  1982(昭和57)4月 同 トリスタン計画推進部 衝突ビーム測定器研究系研究主幹
  1983(昭和58)4月 同 トリスタン計画推進部 研究総主幹
  1987(昭和62)5月 同 加速器研究部 研究総主幹
  1989(平成元) 米国ブルックヘブン国立研究所  RIHC計画責任者
  2005(平成17) 同 NSLS計画加速器システムディヴィジョン・ディレクター
  2007(平成19)〜 同 NSLS-II計画シニアプロジェクトアドバイザー

 

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