2010年11月22日
東北大学の中山耕輔研究員、高橋隆教授らの研究グループは、KEKフォトンファクトリーの放射光を用いた角度分解光電子分光法により、鉄系超伝導体の超伝導機構が物質の種類によらず鉄電子の持つ磁気的性質に関係することを世界で初めて明らかにしました。
画像提供:東北大学 高橋研究室
超伝導体は、電気抵抗がゼロになるという特異な性質から、工業・産業界への期待が膨らみ、材料開発が進められています。その中で、鉄系超伝導体は2008年の2月に東京工業大学の細野秀雄教授により発見され、その後研究が世界中で爆発的に進展し、次々と新型鉄系高温超伝導体が見つかっています。通常、超伝導は極低温下でしか発現しないため、いかにその温度を常温に近づけるかということが実用化への大きな課題の一つです。より高い温度で超伝導になる材料の開発には、どのような仕組みで超伝導になっているのかを知る必要があります。
画像提供:東北大学 高橋研究室
研究グループはKEKフォトンファクトリーのBL28Aに設置された高分解能角度分解光電子分光装置を用いて、鉄系超伝導体の中でも最も単純な構造であるFeTe0.7Se0.3超伝導体の電子状態を観測しました。超伝導が起こるには、電子2個がペア(電子対)になることが不可欠で、どのようなペアなのかを特定することで、超伝導の起源を明らかにすることができます。観測の結果、この超伝導体の電子対が鉄電子の持つ磁気的性質「スピン」に由来することが分かりました。さらに他の鉄系超伝導体と比較した結果、物質の種類によらず、全ての超伝導は同じしくみで起こることが明らかになりました。
鉄系超伝導体では、鉄原子の磁気的性質が超伝導の発現に重要であるというこの研究成果は、超伝導の起こるしくみを統一的に理解するための基礎となります。また、鉄を含む様々な物質が高温超伝導体になる可能性を示し、さらに高い温度で超伝導を起こす超伝導体の発見が期待されます。
本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業チーム研究(CREST)によって行われ、11月5日付のPhysical Review Lettersに掲載されました。