2010年12月16日
12月14日、財団法人・井上科学振興財団より井上学術賞が発表され、KEKフォトンファクトリーのユーザーである東京大学大学院理学系研究科の濡木理(ぬれき・おさむ)教授が受賞しました。
井上学術賞は自然科学の基礎的研究で特に顕著な業績を挙げた50歳未満の研究者に対し贈られるものです。
受賞対象となった研究題目は「遺伝暗号翻訳とタンパク質合成のメカニズムの解明」です。遺伝暗号の翻訳は、遺伝情報をタンパク質に翻訳する普遍的な生命現象です。この過程では、タンパク質の部品である20種類のアミノ酸と遺伝情報を正しく組み合わせるアミノアシルtRNA合成酵素が重要な役割を果たしています。濡木さんは20種類あるアミノアシルtRNA合成酵素の半数の10種類について、KEKフォトンファクトリーやSPring-8を用いた放射光X線構造解析により、基質との複合体の構造を解明し、遺伝暗号の翻訳のしくみを明らかにしました。また、DNAから転写されてできた前駆体tRNAが化学修飾を受けて「成熟化」する過程や、遺伝暗号が進化的に拡張されてきた過程などを、構造から明らかにしています。
さらに遺伝暗号の翻訳機構を発展させ、翻訳後のタンパク質の細胞外への輸送に関わる膜タンパク質の構造生物学的研究にも大きな成果をあげています。
贈呈式は2011年2月に行われます。