2010年10月7日
画像提供:大阪大学 高木淳一
大阪大学蛋白質研究所の高木淳一教授,禾晃和助教(元KEK物構研ポスドク)らの研究グループは、様々な病気の鍵分子で治療の新たなターゲットとして注目されているセマフォリンと、その受容体プレキシンの複合体の立体構造をフォトンファクトリーBL-17Aなどを使い、世界に先駆けて決定しました。この成果は、英国の科学誌「Nature」のオンライン版に9月29日付けで掲載されました。
細胞は外からさまざまな種類の「信号」を受け取り、それに応じて挙動を変えていきます。この「信号」、そしてそれを受け取る「センサー」(受容体)はともにタンパク質です。今回の研究のセマフォリンとプレキシンも、信号とそのセンサーのセットで、もともとは神経細胞で発見されましたが、最近では、がん、自己免疫病、アトピー性皮膚炎など、多くの病気に関与するタンパク質群であることが明らかになっています。
今回の研究で、通常は不活性な二量体を作っているプレキシン(センサー)が、セマフォリン(信号)が近づくと分離して別々にセマフォリンに結合することで細胞内に信号を伝えていることがわかりました。このしくみが明らかにされたことは、前述したような多くの病気に対する治療薬を開発する上でも極めて重要な成果です。今回わかった立体構造をもとに、セマフォリンがプレキシンに結合できなくする化合物をデザインしたり、あるいは逆にセマフォリンを「真似する」ような人工的な物質を作ることを通して、これらの病気の治療への道が開けます。
この研究は、文部科学省、ターゲットタンパク研究プログラムの下で行われました。