2010年10月26日
KEK社会連携部史料室主催の、「日米のサイエンス・アーカイブズを語る」と題した研究会と、自然科学系アーカイブズ研究会が10月13日と14日に相次いでKEKで開催されました。両研究会は、米国議会図書館科学技術部リサーチスペシャリストでありジョンズ・ホプキンス大学客員教授である、スティーン智子博士による「アーカイブのための知識とツール」と題した基調講演(図1)から始まりました。アーカイブズとは、団体、家及び個人が作成し、収受し、保存されてきた記録のことで、手書きや印刷された紙媒体のもの、電磁的記録のもの、そしてオーラルヒストリーなどからなっています。
スティーン智子博士は、修士課程では薬理学、博士課程では集団遺伝学と科学技術社会論学を学ばれ、その後、国立遺伝学研究所の太田朋子博士の下で集団遺伝学を学びながら太田博士の学術的伝記「INTELLECTUAL BIOGRAPHY」を執筆し、コーネル大学で博士号を取得されました。それから現在まで約500人以上の科学者にインタビューをし、科学技術史も専門とされました。2001年から米国議会図書館の科学技術部と日本の科学技術政策を専門とした職につき、所蔵の日本語資料(図2)、特に第2次大戦後のGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)占領下に関する資料を研究されています。御講演では、戦争という歴史においてアーカイブズ・プロジェクトが未来に向けて果たす役割についてのお話もありました。
画像提供:スティーン智子博士
13日の午後は基調講演を受けたシンポジウムが開催され、第一部では唯一の被爆国としての責務である「原爆アーカイブズの構築に向けて」というテーマで、広島市立大学、オランダ国立公文書館、国文学研究資料館の研究者が講演を行いました。続く第二部では、「大学共同利用機関のアーカイブズ」に関して、核融合科学研究所や分子科学研究所、生理学研究所、KEKにおけるそれぞれの成り立ちと大学共同利用機関が取り組んでいるアーカイブズ・プロジェクトの紹介がありました。
また、14日の研究会でもまず、スティーン智子博士による米国議会図書館で実際に行われているアーカイブズの手法について、そのデジタル化や横断検索の方法に関する御講演から始まり、続いて核融合科学研究所や分子科学研究所、生理学研究所、国立極地研究所、国立天文台、KEKといった自然科学系研究所で進められているアーカイブズ・プロジェクトの今後の進め方について、博士の助言と共に熱心な討論が予定時間を越えて交わされました(図3)。
研究会にはその他、学習院大学、京都大学、筑波技術大学、総合研究大学院大学、筑波大学、藤沢市文書館、長浜バイオ大学、佐賀大学、憲政資料館など、多方面から39名の参加があり、活発な質疑応答、議論が行われました。なお、13日の研究会は、学習院大学「旧植民地・占領地関係資料ならびに原爆関係資料のアーカイブズ学的研究」プロジェクトとの共催、日本アーカイブズ学会による後援のもとで実施されました。
基調講演 10:00~11:30
シンポジウム 第一部 原爆アーカイブズの構築に向けて 13:00~15:00
シンポジウム 第二部 大学共同利用機関のアーカイブズ 15:30~17:30