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超伝導加速空洞の製造技術開発施設、運用開始

2011年7月14日

 7月13日(水)、KEKは空洞製造技術開発施設(Cavity Fabrication Facility: CFF)の運用を開始しました。この施設は、次世代型加速器であるリニアコライダー(直線衝突型加速器)、次世代放射光実験施設のエネルギー回収型リニアック(ERL)等の主要な構成要素である「超伝導加速空洞」の品質向上や量産化に向けた研究開発を推進するための研究開発施設です。特にリニアコライダーの開発には1万数千台の超伝導加速空洞が必要とされるため、その製造には量産技術を導入することが不可欠です。

 超伝導加速空洞は、ニオブ等の超伝導体からつくられた空洞を、絶対零度近くの極低温まで冷却して超伝導状態にして運転する加速空洞です。空洞の電気抵抗がほぼゼロになるため、空洞表面で電力損失や加熱が起こらず、非常に効率よくビームを加速できることが特徴です。空洞内面にキズやくぼみ等の欠陥があると、超伝導状態が失われ、ビーム加速に必要な電場が失われてしまうため、KEKではこれまでに、空洞内面を処理する電解研磨施設や内面を検査する機器を開発し、空洞の加速性能の向上に成功しています。

 今回運用が開始された空洞製造技術開発施設は、ISOクラス5レベルのクリーンルームに、プレス室、トリミング室、化学研磨室、電子ビーム溶接室が設置されており、空洞製造の一連の工程を行うことが出来ます。これで、KEKにおいて、空洞製造から電解研磨処理、内面検査、空洞性能測定までの全ての作業を実施することが可能となります。このことにより、空洞製造のどの過程で性能の制限が生じているかを特定することができ、空洞の性能向上に大きく貢献することが期待されます。

 将来的には、産学協同の新たな拠点として、本施設での研究開発をもとに、超伝導空洞製造の工程、品質管理、生産性の向上の実現を目指す予定です。

※ISOクラス5:ISOはクリーンルームの清浄度を示す規格のひとつで、クラス109に分類される。クラス5は、1立方メートル当たり粒径 0.1マイクロメートルのものが10万個以下、粒径 0.5マイクロメートルのものが35,200個以下に規定されている。

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電子ビーム溶接機のスイッチを入れる鈴木厚人機構長