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ILCの夏の合宿、長野で開催

2011年8月26日

8月8日~11日、長野県志賀高原のホテル志賀サンバレーで「加速器・物理合同 ILC 夏の合宿2011」が開催されました。KEK および関係大学のサポートを得て、日本の国際リニアコライダー(ILC)加速器と物理研究者グループが主催したもの。 ILC に興味のある若手研究者・大学院生を中心とし、全国各地の14の大学・研究機関からおよそ70名(うち大学院生29名)が集まりました。

今回の夏の合宿は第二回目で、一回目は昨年、宮城県で開催されました。合宿開催の動機は、二つありました。「一つは、加速器と物理の間のコミュニ ケーションの前提となる基本的な知識を、加速器と物理それぞれの専門家による非専門家向けの講義を通して再確認すること、もう一つは、両者の親睦 をはかり、日常的で緊密な情報交換の下地を作ることです」と、合宿の世話人をつとめた、KEKの藤井恵介氏は語りました。

合宿は4日間にわたり、加速器と測定器の概要についての技術的な講義、ILCの国際推進組織の話のほか、鈴木厚人KEK機構長、ILCリサーチ・ ディレクター(物理研究責任者)の山田作衛氏、ILCプロジェクト・マネージャーの山本明氏による講義もありました。また、欧州合同原子核研究機 関(CERN)の大型ハドロンコライダー(LHC) が順調に稼働を続けており、ヒッグス粒子の発見など、新発見が期待できる予感が増してきたことから、 LHC からの物理の出力と ILCとの関係、ILCの早期実現に向けた加速器開発の現状に焦点をあてる講義もありました。LHC の結果を巡り、理論、実験、加速器の専門家が入り乱れ、熱い議論がかわされました。最終日には、学生が自分の取り組んでいる研究を発表する場が設けられ、飛び入り参加も含め、13名が発表を行いました。 ILCに関係する幅広い分野を網羅したプログラムで、加速器が専門の学生には、素粒子物理の基礎を、物理が専門の学生には加速器の基礎を学ぶ貴重 な機会となりました。

「大いに盛り上がり、有意義な合宿になりました。世話人一同、今後の発展に期待がもてます」と、合宿の世話人代表をつとめた、信州大学の竹下徹氏は合宿を振り返りました。学生からは、「自分が研究していることが、ILCの中で他の部分とどういう関係があるのかがわかりました」(学部4年)、「他の大学の先生方の講義が聞けてよかった。また、他の学生が何を研究しているのかを聞けておもしろいと思った」(博士3年)などの感想が寄せられました。「講義の難易度や、講義後の時間の活用法については、次回に向け検討する必要がありますが、合宿全体としてはうまくいったと思います」(竹下氏)

次回の夏の合宿は、九州での開催が検討されています。

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夏の合宿の参加者ら

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「日本とILC」というタイトルで講演を行うKEK鈴木機構長

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休憩時間に質問する学生の姿があちこちで見られた