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つくばサイエンスキャスティングワークショップの生徒ら、KEKで体験

2011年8月26日

8月11日(木)、つくばサイエンスキャスティングに参加した高校生たちがKEKにて施設見学、実験の一部を体験しました。つくばサイエンスキャスティングは昨年より始まった企画で、学園都市に所在する研究機関をグループに分かれて訪問し、研究内容を調査、そしてグループごとに発表するというものです。将来を担う高校生に、科学・技術に触れる場を提供して興味を深めてもらい、将来の進路選択に役立てることを目的に行われています。今年、KEKには12名が3グループに分かれて訪問し、「宇宙をつかまえる」、「加速器が生み出す光で見極める ~生命の構造と機能~」、「放射線を観る」のテーマで見学、体験しました。

「宇宙をつかまえる」のグループでは、まず藤本順平研究機関講師による講義から始まりました。KEKで は加速器を使って物質の最小単位である素粒子を研究しています。しかし、加速器が作りだす素粒子反応が、実は宇宙誕生時の素粒子の反応を再現していること から、宇宙がまだできたてのころを研究することに相当することを学びました。講義のあとには、宇宙誕生の秘密に迫るために、電子や陽電子を集め、加速する ための入射器棟を訪れ、電子を加速するための大きな電子レンジともいえるクライストロンの断面模型などを見学しました。また、素粒子の衝突反応を記録する実験室を訪れ、2008年のノーベル物理学賞受賞となった小林・益川理論を検証し、現在は改造が進められているBelle(ベル)測定器を間近に見学し、その巨大さに目をみはりました。

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講義を受ける生徒たち

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改造が進むBelle(ベル)測定器の前で

「加速器が生み出す光で見極める ~生命の構造と機能~」のグループでは、構造生物棟にて、宇佐美徳子研究機関講師、加藤龍一准教授より加速器が生み出す光「放射光」と放射光を利用して解明しているタンパク質の立体構造とその働きの関係について講義がありました。その後、タンパク質を生産・精製するための実験室や結晶をつくるロボットなどを観察しました。フォトンファクトリーではタンパク質の結晶構造を解析する装置を見学し、レオナルド・シャバス助教からタンパク質結晶を装置に取り付ける操作説明の後、生徒たちが実践しました。顕微鏡下で細いナイロンワイヤーを操作し、タンパク質の結晶をすくい上げるのは難しい作業ですが、集中して行った甲斐あり、全員が結晶をすくいあげることができました。装置に設置した結晶の写真はお土産として、一人ひとりに渡されました。

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大腸菌を培養してタンパク質を生産させる装置。大腸菌が増えやすい37度に維持されている。

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タンパク質の結晶を探し、ナイロンワイヤーですくっている様子。

「放射線を観る」グループは、上原貞治講師と岩瀬広助教による指導のもと、KEKのコミュニケーションプラザに設置してあるスパークチェンバーを使って、宇宙から降ってくる素粒子・宇宙線の観測を行うとともに、サンプル採取した土を試料とし、ガイガーカウンターでその放射線量を測定しました。スパークチェンバーは、電荷をもった粒子が装置を通過すると、粒子の飛んだ跡に沿って放電が起きる装置です。生徒たちは、放電の様子をカメラで撮影し、写真上でそれぞれの宇宙線の天頂角を測定し、その分布を求めました。また、ガイガーカウンターを使った測定では、試料と測定器の間に厚さが異なるアルミ板や鉛板を挟むことで、β線やγ線の測 定値にどのような違いが出るかを確認し、放射線の性質を学びました。

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スパークチェンバーで宇宙線を観測

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ガイガーカウンターで放射線計測

二日目はつくば国際会議場で、14グループがそれぞれ見学してきたことを発表しました。KEKの他には、宇宙航空研究開発機構、国立環境研究所、物質・材料研究機構、産業技術総合研究所へ訪問、見学してきました。参加した生徒は「エネルギーと質量は同じもので、物ではないものから物ができる、ということに感動しました。」と話していました。

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つくばサイエンスキャスティングワークショップに参加した生徒たち。