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世界初! クォークから超新星爆発までをシミュレーション

2011年9月2日

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8月4日~8日、サマースクール「クォークから超新星爆発まで」—基礎物理の理想への挑戦— が京都大学基礎物理学研究所で開催され、受講生36人、講師・ティーチングアシスタント(TA)25人の参加がありました。KEKの研究者も講師やTAとして活躍しました。

このサマースクールの特徴は、1日目、2日目は格子QCDパート、3日目は原子核パート、4日目、5日目は宇宙パートと、一人が素粒子から宇宙までのシミュレーションを通して行うことにあり、これは世界初の試みです。

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橋本省二教授

QCDパートの最初に、素粒子原子核研究所の橋本 省二(はしもと・しょうじ)教授が、格子QCDシミュレーションの基本的な事柄について講義しました。QCDはクォーク間に働く力に関する理論です。格子QCDシミュレーションでは、時空を格子点に区切り、QCDに基づいてクォーク3個や2個からなるハドロンの質量や、陽子や中性子(核子)の間に働く力(核力)を計算して求めることができます。

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松古栄夫助教

続いて行われたQCDパート1「格子QCDシミュレーションによるハドロン質量の計算」では、計算科学センターの松古 栄夫(まつふる・ひでお)助教が中心となって実習を行いました。受講生は格子QCDの基礎と格子QCDシミュレーションの原理の説明を受け、プログラムを基研の大型計算機上で実行し、π中間子、ρ中間子、中性子の質量を算出しました。

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受講生の長倉さん(左)と野秋淳一特任助教(右)

受講生は大学4年生から准教授まで幅広く、中には作業の基本となるUNIXのコマンドを初めて使う受講生もいました。最初は慣れない作業に戸惑った様子でしたが、素粒子原子核研究所の野秋 淳一(のあき・じゅんいち)特任助教らTAの熱心な指導により、初日のうちに基本的な操作ができるようになりました。受講生の長倉さんは、「格子QCDは何も知らないところから学べました。楽しくて有意義です」と、感想を語りました。

2日目のQCDパート2では、東京大学の土井 琢身(どい・たくみ)特任助教が中心となり、格子QCDによるニ 核子間に働く核力の計算を行い、3日目の原子核パートは理化学研究所の肥山 詠美子(ひやま・えみこ)准主任研究員が中心となり、2日目に求めた核力を用いて、核子間に働く力を核子の数を増やしながら計算しました。

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住吉光介准教授

4日目から始まった宇宙パートでは、沼津工業高等専門学校准教授でKEKの共同研究者である、住吉 光介(すみよし・こうすけ)氏が中心となり実習を進めました。受講生は2日目に求めた核力から、中性子でできた物質中の中性子1個あたりのエネルギー(状態方程式)を求め、それを元に、中性子星内部の物質はどのような性質を持っているのかを調べました。さらに状態方程式の影響によって、中性子星、超新星コアの性質がどのように変わるのかを調べ、状態方程式が超新星爆発に与えうる影響について学びました。

最後は受講生が自ら選んだ状態方程式で2次元超新星爆発のシミュレーションを行い、計算データからムービーを作成するなどして、超新星爆発が多次元的に起こること、状態方程式が重要な鍵であることを学び、核物理と天体現象のつながりについて理解を深めました。こうしてクォークから超新星までの一貫したストーリーが完結しました。

サマースクールの最後に、筑波大学教授の青木 愼也(あおき・しんや)校長は、「このサマースクールでは、研究者が日々体験していること、うまくいったときの喜びやそこに至るまでの苦労を味わってもらうことを重視しました。これを糧に、みなさんが研究者として育っていくことを期待します」と語り、受講生一人ひとりに修了証書を手渡しました。