2011年1月5日
12月15日から20日まで環太平洋国際化学会議2010がハワイにて開催され、KEKのグループと共同研究を行った千葉大学大学院生の風間美里(かざま・みさと)さんが学生賞を受賞されました。日本・アメリカ・カナダ・ニュージランド・韓国・中国などから44学会が参加するこの国際会議では2070件のポスター発表の中から特に優秀な43件を選出し、学生ポスター賞が決定されました。
受賞対象となったポスタータイトルは「Application of photoelectron diffraction theory to ultrafast molecular dynamics(光電子回折理論の超高速分子ダイナミクスへの適用)」でKEK物質構造科学研究所の柳下明(やぎした・あきら)教授らとの共同研究によるもので、単分子反応に伴う分子構造変化の実時間観測を可能にする超高速光電子回折法の開発研究を行いました。本研究は、風間さんの理論計算による水分子および二酸化窒素分子からの内殻光電子放出の角度分布と、柳下教授らのKEKフォトンファクトリーのBL-2Cを使った実験データとを比較検証しながら進められました。発表された開発研究は、現在、理研播磨研究所で建設が進められているX線自由電子レーザー(XFEL)を用いた、紫外線ポンプ・XFELプローブ法の基礎となるものです。
水分子は紫外線によって姿形を目まぐるしく変化させます。超高速光電子回折法では紫外線レーザーの照射後にXFELを照射し、内殻光電子放出角度分布の時間変化を捉えることによって水分子の構造変化を追跡することができます。この手法は大気化学や生命科学の分野への応用も期待でき、XFELを使用したサイエンスに新たな可能性をもたらすことが評価されました。