今年のKEK一般公開は昨年よりも早く9月1日(日曜日)に行われます。この日は日曜日で子供たちの夏休み最後の日にも当たります。丁度、子供たちは新学期に向けて新たな期待や目標を考える機会ですが、そんな時にKEKの一般公開を見ていただき科学の面白さに気づいてもらいたいと目下、公開へ向けた準備がKEK内で始まっています。今日はその中から、科学を体で感じてもらう「科学おもちゃ」を用意し、遊びながら科学の世界に触れてもらうという試みを長年続けている細山謙二教授に話を聞きました。
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Q:これまでの公開日で「科学おもちゃ」のコーナーは大変人気があったと、以前に公開日を見た人から聞いたことがあります。KEKの公開日に「科学おもちゃ」を展示するという試みはいつから始まったのですか?
A:KEK公開日の「科学おもちゃ」は20年近い長い伝統をもっています。この試みを最初に進めたのはKEK物質構造科学研究所の木村嘉孝所長です。木村先生は高エネルギー物理学研究所の研究現場にいらした頃から科学おもちゃの大変な愛好家でした。木村先生は「THE PHYSICS TEACHER」など物理教育の雑誌や文献に出ているアイデアを見つけたり、国際会議などの際に世界の色々な研究所や科学博物館に展示されている物理学の原理を体験できるおもちゃを探し出したりされました。それを私たちに作るように勧めたのが始まりです。以来、私も研究活動の合間を利用して、海外で発見した色んな展示を参考にし、雑誌や文献で得たヒントを生かしてKEK独自のものも組み立て、「科学おもちゃ」をいくつも考案してきました。その際、アイデアだけでなくこうした活動の必要性や資金面での支援など、KEKの新しい「科学おもちゃ」の誕生では、その後も多くの点で木村先生に助けてもらいました。
Q:物理学の原理はよく教科書にまとめられた記述だけで覚えていることが多いのですが、実際に動かしてみて、手で触って物理学の原理を体験できる「科学おもちゃ」の考案には色々な努力が必要でしょうね?
A:すでにある「科学おもちゃ」に新しい機能を持った素材を加えて、さらに改良すると新しい科学おもちゃを作ることもできます。例えば、お湯エンジンという「科学おもちゃ」がありますが、これは磁石の力が高温で失われるという物理の原理をつかって回転力を生み出すおもちゃです。最初は390℃という室温に比べて高い温度で磁石の力が失われる素材を使っていましたが、現在では、お湯の温度で磁石の力を消すことが出来る新しい磁石材料が使えるようになって生まれたものです。
Q:「科学おもちゃ」が持つ不思議さを体感し、その背後にある物理の原理を大変印象深くしめす細山さんの「科学おもちゃ」は公開日に実際に見てもらうのが一番ですね。
それにしても見事に物理の原理が背後にあるおもちゃを探し、見事に再現されていますね。
もう一つ例を教えてください。
A:アーチを作り上げているブロックを用意し、実際にアーチを作ってもらう科学おもちゃを考案しましたが、それが単純な円形でないことを実感してもらえます。これはサンフランシスコにあるファイン・アート館、エクスプラトリアムとよく呼ばれている世界的にも大変有名な科学博物館の展示からヒントを得ました。そこのものはごく一部のアーチで示されており、円の一部ではなく放物線の一部だということが強調されていないように思えたのでこのように改良しました。実際に手で積み上げるブロックの設計はちゃんと科学的計算で設計しました。重力の効果が接線方向の力に変えられているこの仕組みについて、質問を受けても分かりやすく説明できるように用意しました。
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この後、細山さんに案内してもらった場所に積み上げられていた科学おもちゃの仕掛けはどれも物理の原理を効果的に体験できるすばらしいものでした。温度の差が生み出す電気を流す力の効果を使ったおもちゃ、電気の力と磁気の力の関係をまとめた電磁気学の基本原理を体験できるおもちゃ、コイルと蓄電器を組み込んだ回路から生まれる電波を調べるおもちゃ・・おもちゃ箱になりつつあるKEKの倉庫の一隅で科学おもちゃの話はいつまでも続きました。
さて、9月1日(日曜日)、今年、皆さんにご覧いただけるおもちゃは何でしょうか?
ご期待ください。
※もっと詳しい情報をお知りになりたい方へ
→一般公開のwebページ
http://www.kek.jp/openhouse/
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