menubar Top Page KEKとは KEKツアー よくある質問 News@KEK キッズサイエンティスト 関連サイト
トップ >> ニュース >> この記事
 
   image 粒子と反粒子の性質の違い    2002.3.14
 
〜 BELLE実験観測速報 〜
 
B中間子の崩壊の過程から「粒子と反粒子の性質の違い」をさぐるBELLE実験とそのためのB中間子を大量に生み出すKEKB加速器については既に紹介しました。今回は3月11日午前11時にKEKで記者発表されたBELLE実験の観測速報をお知らせしましょう。

この実験ではKEKB加速器で生み出されたB中間子の生成崩壊の様子をBELLE測定器で観測し、崩壊において粒子と反粒子の性質の違いがあるのか、あるとすればどのようにあるのかを探っています。このためにKEKB加速器は、これまでB中間子を生み出す性能を著しく向上させてきました。B中間子を生み出す能力はルミノシティと呼ばれる量で測られますが、KEKB加速器は昨年の3月、世界最高を達成し、それ以後もライバルのアメリカにあるスタンフォード線形加速器センターには抜かれることなく世界一を続けています。両者の加速器が示したルミノシティの頂点の変遷を見てみると、KEKBのB中間子を生み出す性能はこの1年間で2倍以上に向上していることが分かります。

こうして現在ではBELLE測定器が観測したB中間子の一連の生成崩壊の数は約6千万にも達しています。このうち昨年末までに集めた約4千4百万個のB中間子崩壊事例の中から、B中間子がプラスとマイナスのπ(パイ)中間子に崩壊する事例を74まで確認し、この崩壊において、粒子と反粒子の性質に違いがあることが確認されたのです。違いが観測されたB中間子はBゼロと科学者が呼んでいる中間子です。この中間子の崩壊でプラスとマイナスのπ中間子が生まれるのですが、それに関わるBゼロ粒子と反Bゼロ粒子の数が違っているのが最後のグラフと説明を見ていただければよく分かります。

これらの結果、74の観測のうちBゼロ粒子の崩壊例が32、反Bゼロ粒子の崩壊例が42となり、崩壊した粒子と反粒子の性質の違いが明らかに出ています。このB中間子の崩壊は、昨年発表されたBゼロ中間子のJ/ψ(ジェイプサイ)とKs(ケイショート)への崩壊にくらべ、二百分の一も起こりにくい現象だと考えられていました。それが今回、74例ほどとは言え、観測データの評価から、99.9%の確率で、Bゼロ中間子がプラスとマイナスのπ中間子への崩壊でも、粒子と反粒子の崩壊において性質の違いが観測されたものと解釈されています。

この夏にはさらに事例の数も増え、さらに高い確率で結果が発表されるでしょう。今回、発表されたB中間子の崩壊現象は昨年発表された発見とは独立した現象です。今後もKEKB加速器でのBELLE実験によるB中間子生成崩壊事例の観測は増え続けてゆきます。これまでの理論で予想されていたことの確認だけでなく、「粒子と反粒子の性質の違い」に関してさらに新しい発見が期待されています。

今日は国際的な科学者集団が絶え間なく性能を向上させ、優れた実験データの解析を積み上げてゆくKEKB加速器とBELLE実験の最新報告をご紹介しました。
image
[図1]
KEKB加速器、世界最高ルミノシティを続々更新

KEKB加速器は2001年3月に世界最高ルミノシティ(3.3インバースナノバーン/秒)を達成した後も、引き続き性能向上につとめ、2002年3月5日には6.7インバースナノバーン/秒を達成した。1年間で2倍以上の性能の向上がはかられた。この間上図が示すように、競争相手であるPEP-II(米国スタンフォード大学)には一度も抜き返されることはなく、その差をますます広げている。
このルミノシティの向上が昨夏のB中間子におけるCP非保存の発見や今回のダイレクトCP非保存の検出をもたらした。
拡大図(36KB)
 
 
image
[図2]
電子と陽電子の衝突から反Bゼロ中間子とBゼロ中間子が生まれます。
拡大図(5KB)
 
 
image
[図3]
Bゼロ粒子の識別(tag)により反Bゼロ粒子の崩壊を観測し、反Bゼロ粒子の識別(tag)によりBゼロ粒子の崩壊を観測します。上のグラフの青の線は反Bゼロ粒子崩壊の観測を意味し、赤の線はBゼロ粒子崩壊の観測を意味します。青と赤のグラフの山の高さなどの違いに個数の違いが見て取れます。また、下のグラフの黒の線は、データから推定されたCP対称性の破れの時間変化を示します。
拡大図(25KB)
 
 
※ この記事に関するご意見・ご感想などをお寄せください。
 
image
proffice@kek.jp
image