「大強度陽子加速器」建設始まる
茨城県東海村は、これまで日本の原子力研究施設が集まった場所として知られてきました。現在、この場所に巨大な基礎科学研究施設が新たに加わろうとしています。
今日は、KEKと日本原子力研究所(原研)が共同で東海村に建設を始めようとしている「大強度陽子加速器」についてお話しましょう。
これまでKEKでは様々な加速器をつくばの敷地内に開発し建設し、それを使って国際的に評価される研究成果を上げてきました。そうしたKEKの加速器研究で獲得された貴重な経験が、今度は東海村で生かされようとしているのです。
新しい加速器を建設する際、二つの方向があります。より高いエネルギーを目指すものと、より大きなパワーを目指すものです。東海村で建設が始まろうとしているのはより大きなパワーを目指す加速器です。
この加速器は原子核の構成粒子である陽子を加速する陽子加速器ですが、大きなパワーを目指しているので大強度という言葉が使われています。
強度という言葉は良く使われますが、大強度と言われても分かりにくいのでそれを説明しましょう。加速器は電気を帯びた粒子を加速して高いエネルギーの粒子を生み出すとよく言われます。この場合、エネルギーは一個の粒子のエネルギーを表しています。これに対して強度は加速された粒子の群れが運ぶ電気の流れ、平均した電流と言えます。これはシンクロトロン加速器の場合、1回あたりに加速される粒子の数と、加速を行う頻度を掛けたものになります。
この結果、ビームのパワーはエネルギーに強度を掛けたものになります。これは我々の周りで使われる電気のパワーすなわち電力(ワット)が電圧(ボルト)と電流(アンペア)を掛けたものになるのと同じ理屈です。 |
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大きなパワーを目指す大強度陽子加速器は、3つの加速器が連携しビーム当たりの陽子の数をものすごく多くし、加速頻度を高めて強度を上げる最先端技術が使われた加速器の集合体です。加速器のタイプは直線状の線形加速器(600
MeV)、小さな三角形の陽子シンクロトロン加速器(3 GeV)、そして一番大きな陽子シンクロトロン加速器(50
GeV)で構成されています。
陽子はそれぞれの加速器で段階的に加速され、同時にその一部は陽子ビームとして取り出し研究に利用します。大小それぞれシンクロトロン加速器で得られるビームの強度は0.75
メガワット、1メガワットと、現在KEKで稼働している陽子シンクロトロン加速器の100倍以上に達します。これらの加速器はいずれも大きなものだけに全体で東京ドームが6個も入るような大きな土地に6年がかりで建設される予定です。
茨城県ひたち那珂港のほど近くに計画中の加速器配置図を見ると海岸に設置されたコンビナートの様に見えます。完成すると世界最強の陽子加速器団地が東海村に誕生するわけです。 |
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