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今までこのニュースで何度か紹介してきましたが、KEKには加速器から生み出される光を使って、さまざまな物質の謎に迫る研究を行なっている放射光研究施設があります。この施設は、「光の工場」という意味のフォトンファクトリー(Photon Factory, PF) という愛称で親しまれてきました。2002年3月に、フォトンファクトリーは最初に光を発生してからちょうど20年を迎え、18日に記念式典および記念講演会が催されました。
フォトンファクトリーで電子ビームが初めてリングに蓄積され、放射光の発生が確認されたのは、1982年3月12日の未明のことでした。右の写真はそれから数日後に初めて行なわれた実験のひとつです。"<1sec"という当時の研究者の書き込みから、1秒以下の短い露光時間でこの写真が撮影できた驚きが想像できます。
それから20年、フォトンファクトリーは物質を原子や電子のスケールで観察するための「光」を供給しつづけ、多彩な分野の研究に利用されてきました。この施設は大学共同利用機関であり、全国の大学や研究所に所属する研究者の共通の研究施設です。フォトンファクトリーで可能となる研究の幅広さから、共同利用者の数は全国の共同利用機関のなかでもとび抜けて多く、現在では年間約700件の実験課題、2600名の共同利用研究者を迎えて実験が行なわれています。
研究の進歩に合わせてより優れた性能の光が求められるため、フォトンファクトリーではこれまでに二度にわたる大きな改造を行ない、光の性能をアップさせてきました。こうして、研究者に驚きを与えた夢の光は、現在では多くの物質構造科学の分野でなくてはならない道具のひとつとなりました。
また、「光の工場」として優れた光を供給するのはもちろんですが、試料の調製や評価等も含めて、総合的に物質科学研究を推進できる研究環境の整備も行なってきました。そのひとつとして、以前紹介した、構造生物学グループの活動があります。
この記念式典および講演会には、フォトンファクトリーに関係の深い多くの研究者が出席しました。講演会では、フォトンファクトリー創設の頃の話や、各分野を代表する共同利用研究者の話など、これまでのあゆみと未来への展望を織りまぜた貴重な話を聴くことができ、出席した研究者にとってたいへん有意義なものとなりました。
また、式典の翌日からは、毎年行なわれているフォトンファクトリーシンポジウムが2日間にわたり開催され、最新の研究トピックスの報告、将来計画や施設の運営方針など施設のスタッフと共同利用者が共通の場でさまざまな議論を行ないました。
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フォトンファクトリー最初のラウエ写真。
ラウエ法とは、結晶によるX線の回折像を撮影する方法のひとつで、回折されたX線のつくる斑点により、結晶の構造を知ることができます。
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