〜 総研大夏期実習 〜

KEKと総合研究大学院大学は毎年、夏期実習を行っています。今年も第14回目を迎えるKEK・総研大夏期実習が６月18日（水）から20日（金）にかけての３日間KEKで行われました。95名の夏期実習参加希望者が、３つの講義とKEKの研究開発装置を使った23（実習１は素粒子物理学入門講義）の実習テーマから１講義１テーマを選択して、講義の受講と正味１日半の体験実習および施設見学を終えました。その夏期実習の状況について報告致します。

総研大とは

総合研究大学院大学（総研大）とは、文部科学省の全国14の大学共同利用機関の研究者と研究施設を利用して、研究の現場に密着した博士課程後期の大学院教育を行う、「学部を持たない大学院大学」です。KEKも総研大に参加していて、数物科学研究科の下に「加速器科学専攻」「物質構造科学専攻」「素粒子原子核専攻」という３つの専攻が設置されています。これらの専攻では、KEKの加速器を活用して、高エネルギー粒子ビームを用いた基礎から応用までの幅広い研究を行うための人材を育成しています。

現場の研究者から学ぶ

加速器は大がかりな実験装置ですので、大学ではなかなか目にする機会がありません。そこで繰り広げられている最前線の研究も、大学の学部学生や修士課程の大学院生にとってはなかなか目にする機会が少ないわけです。そこでKEKと総研大は平成２年から毎年この季節に、夏期実習と称して、最前線の研究者40名ほどによる講義と実習を学生に体験してもらう機会を設けています。

３日間の夏期実習の目的は、100名程度の実習参加希望者に現場で実際の加速器に触れてもらい、素粒子原子核、物質構造科学の実験及び加速器科学の実験などを自らの手で行うことによって、高エネルギー加速器が拓く新分野を体験、理解し、楽しんでいただくことです。KEKでは、高エネルギー加速器を用いて、物質の究極的構造、素粒子の相互作用など自然の法則の探究を行い、また加速器によって作られる「放射光」「パルス中性子」「ミュオン」を用いて、物理、化学、生物、医学などの先端科学技術の研究を行っています。このようにKEKの研究者は大学等では経験できない実習テーマを準備して、全国の大学生・大学院生等が先端科学技術に夢を抱いて色々な体験をしてもらえるような体制を作っています。

実習は20のテーマで

まず、初日は手続きを行った後に、放射線安全のための講習と実習上の安全について説明を受けます。そして安全に関する知識を十分に理解したか、試験により確認をします。午後は選択された共通講義の受講とテーマ別説明を聞いた後、実習生と先生は夕食を兼ねて懇親会を行います。これは明朝から行う夏期実習のための楽しい親睦会になっています。毎年この懇親会で、夜の10時近くまで、研究の夢や、人生についてなどを語り合い実習生や先生方はよりいっそう親しみを増すのです。

今回の参加実習生が選んだテーマは20テーマありました。あるテーマではひとりの実習生に２人の先生が指導を行い、最先端の研究技術を体験してもらう実習もありました。これは実習生にとって有り難いことでしょうが、共に考え合う仲間の実習生がいないというのは多少寂しいかもしれません。実習生数名程度が１テーマを選択して、議論しながら先生の指導を受け、１日半に及ぶ先端科学技術の研究の実体験をするわけです。

最終日の午後は、選択された見学コースに従って、KEKの主要な施設を見てもらいました。見学終了後、夏期実習に関するアンケートに答えてもらい、終了解散と言うことになります。一方、先生方は次年度の夏期実習のために、反省会を行い再び来年のための準備に取り掛かることになります。このように若い学生さん達に現場での体験や研究者との触れあいを通して夢や興味をもってもらい、次世代の先端科学技術研究を担う若手研究者が生まれることをKEK職員一同は願っています。

※もっと詳しい情報をお知りになりたい方へ

→総合研究大学院大学のwebページ
http://www.soken.ac.jp/japanese%20pages/
japanese-index.html
→KEKの総合研究大学院大学のwebページ
http://www.kek.jp/sokendai/skd-j.html
→夏期実習案内のwebページ
http://www.kek.jp/sokendai/kkj/2003/kakijisyu.html