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環境の安全を守る 2005.8.11 |
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〜 環境安全管理室の一年 〜 |
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昨年度、KEKの法人化に伴って幾つかの室が設けられましたが、その中の「環境安全管理室」のこの1年間の活動をご紹介しましょう。環境安全管理室の業務は労働安全衛生法にしたがってKEK全体の化学安全に関する様々な実務を行うことと、つくば市下水道条例、茨城県が定めた排出基準を順守するための定期的な検査の実施が挙げられます。加速器と環境化学の結びつき、一見不思議な気がしますが、私たちが行う実験や日常生活から機構外へ排出されるものを常に監視しているわけです。 排水管理 KEKの廃水は3箇所から公共下水道に排水されています。昨年度の排水量は約16万トンでしたので、一日で440トンの水が排水されていることになります。管理室では、KEKから排出される水が常に排水基準を満たしているかどうかを毎月40の分析項目について検査しています。図1に示すように、構内に設けられた排水出口のみならず、それに直結する集水マス13ヶ所での採水も行い(図2)、化学分析を行っています(図3)。昨年度、排水出口で環境基準を越えることはありませんでした。水素イオン濃度(pH)は基準内に収まっています。特に食堂や宿舎周辺では調理に伴い、動植物油脂類や生物学的酸素要求量(BOD)が常に高くなっています(図4)。毎月の排水口での定期測定では重金属の汚染は認められませんでしたが、5月に不定期の測定を行った際に1度だけ基準値0.5ppbの約3倍の濃度の水銀が検出されるということがあり、直ちにつくば市に報告しました。 また、加速器施設からの排水は陽子加速器で4000トン、電子加速器で360トンです。陽子加速器の方が約1桁多いのは、地下水の湧水によるものです。排水を採取して法令基準の20分の1の放射能レベル以下であることを事前に監視するだけでなく、排水の際には化学処理することによって有害金属などが機構外に出ることの無いようにしています。 地下水の測定 機構では、たびたびの大規模な建設工事が行われてきており、また、KEKBの施設のように地下に施設が造られています。地下水の流れが変わったり、水質に変化が起きたりしないかにも配慮する必要があります。そこで、敷地内の各所に井戸を掘り、地下水をモニターすることで、周辺環境への影響を監視しています(図5)。環境汚染を監視する井戸は15ヶ所にあり、敷地境界では、7ヶ所で地表面にいちばん近い第1帯水層から採水して、化学物質による汚染を監視しています(図6)。敷地西側1ヶ所でテトラクロロエチレンが1リットル当り10ナノグラム検出されています。環境基準の10分の1以下ですが今後も継続して監視を続けることにしています。それ以外では有害物質は検出されていません。また、地下水の動きと水質を観測するには、第1帯水層だけでなく、より深い帯水層についても採水する必要があり、11ヶ所で合計23本の井戸から採水し、分析しています。各観測井戸での陽イオンと陰イオンの濃度を図7に示しました。敷地内であってもイオンの成分に違いが見られることが分かります。これらのデータから同じ敷地と言えども異なる水源があることが分かります。 化学薬品の管理 化学物質には毒物、劇物の管理と消防法に基づく危険物の管理があります。そこで、薬品の入手から廃棄までの流れを把握していることが必要です。購入する化学薬品は全て購入時に申請し、毒物・劇物についてバーコード管理をすることで、行方を追跡できるようになっています。 廃液の処理 使用された化学薬品の廃液は全て回収しています。昨年は8,500リットルの有機廃液、2,000リットルの無機廃液、写真廃液640リットルなどを処理しています。無機廃液は重金属廃液、フッ素廃液、水銀廃液、シアン廃液に分類し、有害成分を除去した後に放流されています。 実験室の排水は一旦タンクに留め置かれ、バキュームカーで回収しています。昨年度は約500立方メートルを凝集沈殿処理しました。 その他 また、昨年度からの業務に作業環境測定が新たに加わり、有機溶剤や特定化学物質の使用時の測定を行っています。化学実験室の所内利用や依頼分析も行っています。依頼分析では、配管などに付着したものの分析などが行われました。 加速器運転に伴って発生する機器の腐食の原因となるものとして、加速器室内の空気の放射線による分解で生成するオゾンやNOx等があります。このような腐食性のガスやエアロゾルの生成機構の研究やモニタリング技術の開発も進められています。これらの現象は大気上層での光化学現象とも類似しており、大気環境の研究とも密接に結びつくものだと言えます。
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