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last update:09/02/06  

   image 湯浅年子メモリアル    2008.12.18
 
        〜 日仏科学共同研究のパイオニア 〜
 
 
  湯浅年子さん(1909-1980)(図1)は、東京女子高等師範学校(現お茶の水女子大学)を卒業後、フランスでジョリオ=キュリーに師事し、フランス国立科学研究センター(CNRS)研究員としてオルセー原子核研究所において30年間研究をおこなった女性科学者です。2008年は日仏両国の交流が始まってから 150年目にあたります。日本およびフランスでこれを記念してさまざまな催しが開催されています。CNRSでも多くのイベントが企画されてきました。その一環として、湯浅年子さんの日仏における学術的・文化的交流に対する功績を称えるため、11月24日にパリのCNRS本部において「湯浅年子メモリアル」が開催されました。会場には湯浅年子さんゆかりの人々や、日仏科学共同研究をおこなっている関係者約50名が集まりました(図2)。日本からも約10名が参加しました。湯浅年子さんの業績を振り返るとともに、現在おこなわれている日仏共同研究のレビューがおこなわれました。

湯浅年子

開会の挨拶をおこなったミッシェル=スピロ素粒子原子核研究所(IN2P3)所長によれば、「このシンポジウムは湯浅年子という、日仏科学共同研究において非常に特徴ある意味をもつ人物に捧げる」ものでした。

湯浅年子さんのフランスにおける初めての仕事は、フレデリック、ジョリオ=キュリーのチームが 1937年に建設をしたヨーロッパ最初のサイクロトロンを用いて行われました。独軍占領下のパリにおける研究生活の後、パリ解放に伴うベルリンへの避難 (1944年)、さらに独軍降伏によるシベリア経由での日本への送還(1945年)を経ることになりました。終戦後、東京女子高等師範学校教授として教鞭をとった後ふたたび渡仏し、以降フランスで原子核物理の研究に努めました。湯浅年子さんは、エッセイ「パリ随想」などの執筆でも知られています。このように湯浅年子さんは、日本とフランスの原子核物理における共同研究の黎明期において目覚ましい貢献をおこないました。

来年は湯浅年子生誕100年にあたり、生前を知る人たちも少なくなっています。フランス国立科学研究センターの洪江美さんは「Biography of Miss Toshiko Yuasa」(湯浅年子の生涯)と題し、湯浅さんの生涯をフランスでの研究活動等を中心に講演しました(図3)。ジョリオ=キュリーの娘であるエレーヌ=ランジェヴァン- ジョリオ(原子核物理学者、図4)や共同研究者であったピエール=ラドバニは、湯浅年子さんの業績や思い出について講演しました。また会場からも逸話の紹介がありました(図5)。気管支炎による発熱があっても研究を進めるため、医者は休めと言ったのに「38度は日本人女性にとって平熱である」と言い張って研究を続けようとした話や、体が小さかったので車を運転していても対向車からみると無人の車が動いてくるように見えた話などがユーモアを混ぜて紹介されました。湯浅年子さんと近しい関係にあった方々には共に思い出に浸る機会となり、湯浅年子さんを知らない日仏の若い世代の研究者は、困難な時代に研究生活を送った湯浅年子さんに思いを馳せる機会となりました。

素粒子・原子核実験における日仏協力

加速器は湯浅年子さんの頃と比べると、巨大なスケールの装置になり国際協力は必要不可欠になっています。日本とフランスは、素粒子・原子核・宇宙物理の研究において非常に多くの共同研究を行っています。特に近年では国際連携研究所として、素粒子分野におけるKEK-IN2P3の日仏素粒子物理学研究所 (France Japan Particle Physics Laboratory, FJPPL)、原子核分野のGanil-Rikenが立ち上がっています。FJPPLでは、ニュートリノ物理やB中間子の物理、ハドロンコライダー物理などが精力的に共同研究されており、その意義について紹介がありました(図6)。

日仏協力の未来

シンポジウムの後にはカクテル・パーティーとなり、あちこちで日仏関係者の話の輪ができました。特に湯浅年子さんを直接知っているフランスの方々(約 15名)の生の声を聞くことができたことは、大変有意義でした。来年春には、日本でFJPPLワークショップが開催されます。その折に、FJPPLが「湯浅年子ラボラトリー」と命名される発足式がおこなわれる予定です。湯浅年子さんの親族の方やお茶の水女子大学関係者が臨席くださることになっています。今回のシンポジウムがきっかけとなり、日仏共同研究が今後ますます発展することが期待されています。



※もっと詳しい情報をお知りになりたい方へ

→「湯浅年子メモリアル」のwebページ
  http://www.th.u-psud.fr/YUASA150/
            Yuasa_event/entrance_jp.html

→高エネルギーニュース 湯浅年子シンポジウム
      = 日仏交流150周年にあたり= のPDFページ
  http://www.jahep.org/hepnews/
            2008/Vol27No2-2008.7.8.9Kou.pdf

→KEK-IN2P3日仏素粒子物理学研究所(FJPPL)のwebページ
  http://fjppl.in2p3.fr/cgi-bin/
            twiki.source/bin/view/FJPPL/WebHome

→お茶の水女子大学のwebページ
  http://www.ocha.ac.jp/
→お茶の水女子大学デジタルアーカイブ女性研究者名鑑のwebページ
  http://archives.cf.ocha.ac.jp/researcher.html

 
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[図1]
湯浅年子さん(1909-1980)
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[図2]
シンポジウム会場。
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[図3]
湯浅年子さんと同じお茶の水女子大学出身の洪江美さん。
拡大図(24KB)
 
 
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[図4]
湯浅年子さんの想い出を話すエレーヌ=ランジェヴァン-ジョリオ氏。
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[図5]
湯浅年子さんの知人によるコメント。
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[図6]
ニュートリノ物理について報告するフランソワ=ピエール氏。
拡大図(38KB)
 
 
 
 
 

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